大嫌い同士の大恋愛     ー結婚狂騒曲ー
 帰省が終わり、後は、仕事が始まるのを待つばかり。
 想真さんのおかげなのか、少しは気が晴れた私は、いろんな会社のホームページやら、スパイスのサイトなどを探し、勉強に費やす。
 企画課に引っ張って来られ、あっという間に五年も経っているのに、私には、知識が足りなすぎると痛感させられた。
 この前の”勉強会”で、彼が教えてくれる事に、うなづくか尋ねるかしかできなかった自分が、情けなかったのだ。


 ――ちょうど良い機会だ。


 ――私は、失恋の痛みは――仕事で癒す。


 想真さんと話しているうちに、そう、感じたのだ。

 ――男なんて、大嫌い。

 もう、そうは言わないけれど――男などいなくても、私は、充実して生きてみせる。



 ――きっと――そうしているうちに、江陽の事など、過去になるのだ。


 ――……きっと――……。



 お盆も明け、再び、いつものような毎日が始まった。
 ――いつもの、というのは、私を取り巻く環境が、だ。
 私自身は、もう、腫れぼったい目は通常仕様。
 その重みに耐えながら、出された書類を眺めていく。
 休み中、想真さんに受けた刺激のおかげで、それでも、少しは知識を入れる事ができたが――私の仕事は、あくまで素人視点で見る事だ。
 そのさじ加減に悩みながらも、気になる箇所に付箋を貼りつけ、メモを書く。
 そんな日々が続く中、ふと、スマホに想真さんからメッセージが届いた。

 ――週末、空いてますか?

 まるで、デートの誘い方。
 思わず構えてしまった私は、用件だけを確認しようとメッセージを打ち込んでいくが、その途中で彼から追加された。

 ――ホテルディナーを予約した友人が、事情でキャンセルしなくてはならなくて。
 ――でも、キャンセル料も、もったいないので、いかがでしょうか。

 私は、少しだけ考え、返信する。

 ――先日のような、勉強会でしたら。

 その予防線とも言える文言を、想真さんは気にもせずにOKをくれた。

 ――もちろんです。一応、ドレスコードがあるので、よろしくお願いします。

 けれど……続く言葉に固まった。

 ――え。

 ――ウソ。そんな格式ばったところなの⁉

 でも、もう、うなづいてしまったのだ。

 ――聖に泣きつくしかないか。

 何が引っかかるって、自分のセンスが一番引っかかる。
 正解がわからないのだから、信頼できる聖に任せよう。
 私は、そのまま彼女にメッセージを送ると、速攻でスタンプが返された。

 ――オッケー!任せてー‼

 それを頼もしく思いながら、私は、スマホをテーブルに置いた。
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