大嫌い同士の大恋愛 ー結婚狂騒曲ー
社長室を出ると、聖は、半泣きになりながら私を見下ろした。
「……羽津紀……想兄ちゃん、何も言って無かったよね……?」
「ええ。……お互いに話している時に、そんな話題は出なかったわ」
想真さんに会ったのは、あの夜以降は無い。
そして、その後、お忙しいのか、何も連絡など無いのだ。
すると、私達の会話を聞いていた片桐さんは、確認するように尋ねた。
「……ゴメン、名木沢さん。……キミ、久保さんの事、知ってたの……?」
「え」
私は、彼と、その後ろの神屋課長を順に見やる。
「どういう事、ですか」
「――久保クンが入社する時、課長以上には伝えられていたんだよ」
その口調に――私は、確信する。
「……聖のお兄さんが、ワールドスパイスの企画課長、という事を、ですか」
「……うん。……僕は、彼女と仲が良いキミが企画課に来た時に、神屋課長に言われたんだ。他はともかく、僕の班は、新規企画だからさ」
それは――。
聖と仲が良いなら――想真さんと繋がっていてもおかしくはない。
だから、注意しろ、と。
――思えば、私の仕事は、課長へ渡す書類のチェックに留まり続けている。
そして、採用された案を思い返せば、どれも、すべて、どこかは修正されていたはず。
それは、課長の目で、するべきだと判断されたものだと思っていたが――。
「……完全に私のチェックで通さなかったのは――……私が、信用されていなかったという事ですか」
二人は、一瞬だけ口ごもる。
だが、課長は、強い口調で返した。
「そう思われても、反論できないが――キミを企画に連れてきたのは、キミの感覚が欲しかったからなのは確かだよ。……社長からの通達は、リスクマネジメントの一つでしかない」
――けれど……今まで、ずっと――そういう目で見られていたのだという事なのだ。
私は、怒鳴り散らしそうな衝動を抑え、頭を下げた。
「……申し訳ありません。……今日は、とても、仕事をできそうにありませんので、早退させてください」
誰もそれを止める間も無く、エレベーターが到着すると、私は、聖を残して一人乗り込む。
そして、無言で企画課に戻ると、皆さんに早退する旨を伝え、足早に会社を後にしたのだった――。
「……羽津紀……想兄ちゃん、何も言って無かったよね……?」
「ええ。……お互いに話している時に、そんな話題は出なかったわ」
想真さんに会ったのは、あの夜以降は無い。
そして、その後、お忙しいのか、何も連絡など無いのだ。
すると、私達の会話を聞いていた片桐さんは、確認するように尋ねた。
「……ゴメン、名木沢さん。……キミ、久保さんの事、知ってたの……?」
「え」
私は、彼と、その後ろの神屋課長を順に見やる。
「どういう事、ですか」
「――久保クンが入社する時、課長以上には伝えられていたんだよ」
その口調に――私は、確信する。
「……聖のお兄さんが、ワールドスパイスの企画課長、という事を、ですか」
「……うん。……僕は、彼女と仲が良いキミが企画課に来た時に、神屋課長に言われたんだ。他はともかく、僕の班は、新規企画だからさ」
それは――。
聖と仲が良いなら――想真さんと繋がっていてもおかしくはない。
だから、注意しろ、と。
――思えば、私の仕事は、課長へ渡す書類のチェックに留まり続けている。
そして、採用された案を思い返せば、どれも、すべて、どこかは修正されていたはず。
それは、課長の目で、するべきだと判断されたものだと思っていたが――。
「……完全に私のチェックで通さなかったのは――……私が、信用されていなかったという事ですか」
二人は、一瞬だけ口ごもる。
だが、課長は、強い口調で返した。
「そう思われても、反論できないが――キミを企画に連れてきたのは、キミの感覚が欲しかったからなのは確かだよ。……社長からの通達は、リスクマネジメントの一つでしかない」
――けれど……今まで、ずっと――そういう目で見られていたのだという事なのだ。
私は、怒鳴り散らしそうな衝動を抑え、頭を下げた。
「……申し訳ありません。……今日は、とても、仕事をできそうにありませんので、早退させてください」
誰もそれを止める間も無く、エレベーターが到着すると、私は、聖を残して一人乗り込む。
そして、無言で企画課に戻ると、皆さんに早退する旨を伝え、足早に会社を後にしたのだった――。