大嫌い同士の大恋愛 ー結婚狂騒曲ー
想真さんは、しばらくの間、ハンドルを指で軽く叩いていたが、ようやく私を見やった。
「――突然過ぎて、事情が呑み込めないんだ。最初から、話してくれないかな」
彼に言われ、私は、一瞬迷うが、うなづいた。
もう、世間に公表されてしまったのだ。
今さら、守秘義務など無いだろう。
「――……あの企画は……ウチも、同じものを上げていて……」
「――え」
そう告げると、想真さんは、本気で驚いたようだった。
「え、ちょっと待って。……昇龍さんも?」
「ハイ。――やっと通して、これから、という時でした」
「――ま、まあ……考えが被る事なんて、無くはない……んじゃ、ないかな」
けれど、取り繕うように言われ、私は、彼をにらんだまま続けた。
「でも!……ほぼほぼ一緒なんて、あり得ますか⁉」
「――……い、いや、ちょっと待って。ウチが、企画を盗んだって言いたいのかい?」
私は、この前、片桐さんが言っていた言葉を思い出す。
――人の頭で考えるんだ。
いくら、似通っていても、どこかしらが違うはず――なのに、この企画は、日程と当選人数。そのくらいしか、違っていなかった。
疑う余地が、あり過ぎるのだ。
想真さんも、視線を鋭くすると、私を見やった。
「こういうものは、出したモン勝ちだと思うんだけど」
「それでも――!――……たまたま、同じコンセプトの企画が通って、そちらが早かっただけというなら、あきらめもつきます。でも、これに限っては、中身がまったく同じなんです!」
すると、彼は、眉間にしわを深く刻んだ。
「――……まったく?」
「ハイ」
「……でも、オレのところに来たのは、お盆過ぎ――」
「――……ウチは……私のところに来たのは、今年の夏前、です……」
そう告げれば、想真さんは表情を変えた。
「――ウチはね……フットワークは軽い方なんだ。キャンペーン企画は、決まったら早いうちに全社員に公表するし
――販促資材も、初回分は一週間で手配できるように、仕組みは作ってるんだよ」
彼は、座席に背を預けると、腕組みする。
「さっきも言ったように、出したモン勝ちっていうのが、先輩の――社長の方針だからさ。悪いけど、そういう事情でも、今さら引けないよ」
「……そう、ですか……」
私は、持っていたペットボトルを握り締める。
――結局……私が、OKを出した案が、そのままワールドスパイス側に持って行かれた形だろう。
でも、一体、どこから――……。
すると、想真さんは、感情を抑えたまま言った。
「――そちらの社長とウチの社長とで、日程合わせてもらう事はできるかな」
「え」
彼は、私に向き直ると、真っ直ぐに見つめる。
その表情は、口を挟めないものだ。
「……できるかどうかは……何とも……。……私は、一社員なので……」
「じゃあ、直属の上司の方とは話せる?」
「――それは……まあ……」
「ウチは、そちら程大きくないからね。社長と言ってもオレの先輩だし、話は簡単だけど――とにかく、企画に関係のある、お互いの社員全員に聞き取りをしたいと思う」
「――……っ……!」
私は、息をのむ。
――それは……完全に、疑ってかかるという事だ。
自分の会社の社員を。
「……羽津紀さんには、申し訳無いけれど……こうなってしまった原因は、ハッキリさせないといけない」
私は、彼の強い口調に、その揺るがない意思を感じる。
「……わかり、ました……」
彼だって、ショックなのだ。
――自分の扱った企画が、誰かの手によって、ライバル会社から奪われたものかもしれないのだから。
私は、感情のままに当たり散らしたのに――……。
「……想真さん、すみませんでした」
「え?」
「……完全に、冷静さを欠いた、八つ当たりです……」
すると、フワリ、と、頭を撫でられる。
慣れないそれに、私は、思わず顔を上げた。
「――仕方ないよ。……でも、それが、キミの良いところかな」
「え」
「自分の仕事を大事にしているからこそ、そうやって感情的にもなれる」
「そ、れは……」
すると、想真さんは、ニコリ、と、聖を思わせる笑みを浮かべた。
「――……本気で、好きになりそうだよ」
「……想真さん……」
戸惑う私を気遣ってか、それ以上は、何も言ってこなかった。
――でも……。
――何で……私は、何も言えなかったんだろう……。
「――突然過ぎて、事情が呑み込めないんだ。最初から、話してくれないかな」
彼に言われ、私は、一瞬迷うが、うなづいた。
もう、世間に公表されてしまったのだ。
今さら、守秘義務など無いだろう。
「――……あの企画は……ウチも、同じものを上げていて……」
「――え」
そう告げると、想真さんは、本気で驚いたようだった。
「え、ちょっと待って。……昇龍さんも?」
「ハイ。――やっと通して、これから、という時でした」
「――ま、まあ……考えが被る事なんて、無くはない……んじゃ、ないかな」
けれど、取り繕うように言われ、私は、彼をにらんだまま続けた。
「でも!……ほぼほぼ一緒なんて、あり得ますか⁉」
「――……い、いや、ちょっと待って。ウチが、企画を盗んだって言いたいのかい?」
私は、この前、片桐さんが言っていた言葉を思い出す。
――人の頭で考えるんだ。
いくら、似通っていても、どこかしらが違うはず――なのに、この企画は、日程と当選人数。そのくらいしか、違っていなかった。
疑う余地が、あり過ぎるのだ。
想真さんも、視線を鋭くすると、私を見やった。
「こういうものは、出したモン勝ちだと思うんだけど」
「それでも――!――……たまたま、同じコンセプトの企画が通って、そちらが早かっただけというなら、あきらめもつきます。でも、これに限っては、中身がまったく同じなんです!」
すると、彼は、眉間にしわを深く刻んだ。
「――……まったく?」
「ハイ」
「……でも、オレのところに来たのは、お盆過ぎ――」
「――……ウチは……私のところに来たのは、今年の夏前、です……」
そう告げれば、想真さんは表情を変えた。
「――ウチはね……フットワークは軽い方なんだ。キャンペーン企画は、決まったら早いうちに全社員に公表するし
――販促資材も、初回分は一週間で手配できるように、仕組みは作ってるんだよ」
彼は、座席に背を預けると、腕組みする。
「さっきも言ったように、出したモン勝ちっていうのが、先輩の――社長の方針だからさ。悪いけど、そういう事情でも、今さら引けないよ」
「……そう、ですか……」
私は、持っていたペットボトルを握り締める。
――結局……私が、OKを出した案が、そのままワールドスパイス側に持って行かれた形だろう。
でも、一体、どこから――……。
すると、想真さんは、感情を抑えたまま言った。
「――そちらの社長とウチの社長とで、日程合わせてもらう事はできるかな」
「え」
彼は、私に向き直ると、真っ直ぐに見つめる。
その表情は、口を挟めないものだ。
「……できるかどうかは……何とも……。……私は、一社員なので……」
「じゃあ、直属の上司の方とは話せる?」
「――それは……まあ……」
「ウチは、そちら程大きくないからね。社長と言ってもオレの先輩だし、話は簡単だけど――とにかく、企画に関係のある、お互いの社員全員に聞き取りをしたいと思う」
「――……っ……!」
私は、息をのむ。
――それは……完全に、疑ってかかるという事だ。
自分の会社の社員を。
「……羽津紀さんには、申し訳無いけれど……こうなってしまった原因は、ハッキリさせないといけない」
私は、彼の強い口調に、その揺るがない意思を感じる。
「……わかり、ました……」
彼だって、ショックなのだ。
――自分の扱った企画が、誰かの手によって、ライバル会社から奪われたものかもしれないのだから。
私は、感情のままに当たり散らしたのに――……。
「……想真さん、すみませんでした」
「え?」
「……完全に、冷静さを欠いた、八つ当たりです……」
すると、フワリ、と、頭を撫でられる。
慣れないそれに、私は、思わず顔を上げた。
「――仕方ないよ。……でも、それが、キミの良いところかな」
「え」
「自分の仕事を大事にしているからこそ、そうやって感情的にもなれる」
「そ、れは……」
すると、想真さんは、ニコリ、と、聖を思わせる笑みを浮かべた。
「――……本気で、好きになりそうだよ」
「……想真さん……」
戸惑う私を気遣ってか、それ以上は、何も言ってこなかった。
――でも……。
――何で……私は、何も言えなかったんだろう……。