大嫌い同士の大恋愛 ー結婚狂騒曲ー
22.なら、僕と結婚しましょう
何とか泣き止むと、既に日は落ちていて、街灯の明かりが煌々と辺りを照らし始めている。
「送るよ」
「――……ありがとうございます」
一緒に社屋を出る片桐さんに言われ、私は、素直にうなづく。
今は、抵抗する気も起きない。
ポツポツと当たり障りの無い会話をしながら、マンションに到着すると、私は軽く頭を下げた。
「じゃあ、また、あ――」
明日、と、言おうとするが、不意に門の陰から腕を引かれ、言葉は切れる。
「きゃあっ⁉」
「名木沢さん⁉」
反動で崩れ落ちかけた体は、後方で受け止められた。
そして、声をふさぐように口を手で押さえられ、ストン、と、座らされる。
――……え?
振り向き、顔を上げれば――気まずそうな、翔陽くんの顔。
「弟くん?!」
それに気づいた片桐さんは声を上げるが、すぐに、静かに、と、いうジェスチャーをされ、口を閉じた。
「……し、翔陽、くん……?」
「――静かにしてもらえます?見張り、撒いてきたんで」
「え」
私は、片桐さんに視線を向けると、うなづいてこちらに来た。
そして、同じようにしゃがみ込み、三人、門の内側にある植え込みの陰に隠れた。
「……ど、どうして……」
そう尋ねれば、思い切り顔をしかめられた。
その表情は――江陽そっくりで――。
泣きたくなるのを堪え、彼の返事を待つ。
「……どうして、じゃないですよ。……もう、兄さんには時間が無いのに……」
「え」
「どういう事?」
片桐さんが、私の代わりに尋ねれば、翔陽くんは声を潜め――だが、憤りながら言った。
「大叔父さんが、約束どおり、次の株主総会で、経営から手を引くと宣言するそうなんです」
「……そう……」
それは、江陽へ出した条件。
宣言通り、という訳か。
「でも、それをされたら、後は、あの女と結婚するだけなんですよ」
「――……そう……」
「そう、じゃないです!……今なら、まだ間に合うって言ったじゃないですか、羽津紀さん!」
「コラコラ、見張りにバレたらマズいんだろう?」
勢いよく立ち上がろうとする翔陽くんを、片桐さんが押さえた。
彼は、我に返ったように、大人しく身体を縮こませる。
「……だから……」
言いかけた翔陽くんに、私は、首を振った。
「――……ごめんなさい、翔陽くん。……私には、アイツの決断を台無しにはできない」
「羽津紀さん……」
ヤツの決断は――家族を守るため。
それを知ってしまった以上、もう、私にできる事は無いのだ。
――アイツを想い続ける以外は――……。
「送るよ」
「――……ありがとうございます」
一緒に社屋を出る片桐さんに言われ、私は、素直にうなづく。
今は、抵抗する気も起きない。
ポツポツと当たり障りの無い会話をしながら、マンションに到着すると、私は軽く頭を下げた。
「じゃあ、また、あ――」
明日、と、言おうとするが、不意に門の陰から腕を引かれ、言葉は切れる。
「きゃあっ⁉」
「名木沢さん⁉」
反動で崩れ落ちかけた体は、後方で受け止められた。
そして、声をふさぐように口を手で押さえられ、ストン、と、座らされる。
――……え?
振り向き、顔を上げれば――気まずそうな、翔陽くんの顔。
「弟くん?!」
それに気づいた片桐さんは声を上げるが、すぐに、静かに、と、いうジェスチャーをされ、口を閉じた。
「……し、翔陽、くん……?」
「――静かにしてもらえます?見張り、撒いてきたんで」
「え」
私は、片桐さんに視線を向けると、うなづいてこちらに来た。
そして、同じようにしゃがみ込み、三人、門の内側にある植え込みの陰に隠れた。
「……ど、どうして……」
そう尋ねれば、思い切り顔をしかめられた。
その表情は――江陽そっくりで――。
泣きたくなるのを堪え、彼の返事を待つ。
「……どうして、じゃないですよ。……もう、兄さんには時間が無いのに……」
「え」
「どういう事?」
片桐さんが、私の代わりに尋ねれば、翔陽くんは声を潜め――だが、憤りながら言った。
「大叔父さんが、約束どおり、次の株主総会で、経営から手を引くと宣言するそうなんです」
「……そう……」
それは、江陽へ出した条件。
宣言通り、という訳か。
「でも、それをされたら、後は、あの女と結婚するだけなんですよ」
「――……そう……」
「そう、じゃないです!……今なら、まだ間に合うって言ったじゃないですか、羽津紀さん!」
「コラコラ、見張りにバレたらマズいんだろう?」
勢いよく立ち上がろうとする翔陽くんを、片桐さんが押さえた。
彼は、我に返ったように、大人しく身体を縮こませる。
「……だから……」
言いかけた翔陽くんに、私は、首を振った。
「――……ごめんなさい、翔陽くん。……私には、アイツの決断を台無しにはできない」
「羽津紀さん……」
ヤツの決断は――家族を守るため。
それを知ってしまった以上、もう、私にできる事は無いのだ。
――アイツを想い続ける以外は――……。