大嫌い同士の大恋愛 ー結婚狂騒曲ー
翔陽くんと連絡先を交換する訳にもいかないので、手段を考えようとするが、あっさりと言われた。
「そんな打ち合わせ必要ありませんよ。――僕の言う事に、うなづいてくれていれば良いので」
「――……キミ、何を企んでいるの?」
すると、片桐さんが、腰を上げながら翔陽くんに尋ねる。
その口調は――少々刺々しい。
「――言ったじゃないですか。……僕は、兄さんに、あんな表情をさせたくないだけですよ。そして――僕達一家が交渉の材料になるのであれば――その価値を無くせば良いという結論に至りました」
「え?」
何だか、翔陽くんの言葉に違和感を覚える。
「翔陽くん……?え、まさか……ご両親は、ご存じなの?」
てっきり、彼の一存で突っ走って来たのだと思ったが。
彼は、クスリ、と、口元を上げた。
その表情は、高校生には、とても見えない。
「何も、申し上げられませんよ。――ただ、僕が、見張りを振り切れたという事実を考えていただければ」
それは――三ノ宮社長と亜澄さんも協力したという事だ。
私は、片桐さんを見上げ、立ち上がった。
「――……片桐さん、この事は――」
「わかってる、他言無用。――弟くん、信用してくれるかな?」
そう尋ねれば、彼も立ち上がり、肩をすくめた。
「新規企画班、班長さん――でしょう?口の堅さが必要な仕事をしている方を、信用しない訳にはいきませんよ」
「それはどうも」
片桐さんは、苦笑いで返すと、周囲を見渡した。
「……とりあえず、僕は帰るよ。弟くんの見張りが、どこにいるかわからないから、名木沢さんも一緒に。送った体でいないと」
「わかりました。――じゃあ、翔陽くん、私はどうすれば良いのかしら?」
何も連絡手段が無い以上、ここで、すべて決めないといけない。
任せろ、と、言われても、何をどうしたらいいのかわからなければ、どうしようもないのだ。
すると、彼は、チラリと門の向こうを見やると小声で言った。
「兄さん達とは、正午に約束しているので。羽津紀さん、今の僕達の自宅はご存じですよね」
私は、うなづいて返す。
以前、何だかんだで、亜澄さんに連れて行かれたのだから。
「なら、最寄り駅で待っていてください。――そうですね、時間は、十一時半頃に駅に着けるようにお願いします。僕が迎えに行きますので」
「わ、わかったわ」
翔陽くんは、うなづくと、思い出したように言った。
「ああ、それと――この前のような恰好でお願いしますね」
「え、あ、で、でも、あれは……」
私は、思わず、口ごもってしまう。
どうにかこうにか、ひねり出した服装なのだ。
あれと同じレベルで――しかも、違うデザインの服など、持っている訳が無い。
「なら、僕が買いますよ。駅ビルに、ハイランクの店があったと思うので」
「ちょっ……高校生に買わせる訳に、いかないでしょ!」
平然と言われ、動揺してしまう。
近頃の高校生は、そんな店にあっさりと入る事ができるのか。
「……じ、自分で用意するから……」
「ああ、でも、指輪は選ばないとなので――やっぱり、十時集合で」
「は⁉」
――指輪⁉
あっけに取られ、口を開けてしまう。
「名木沢さん、顔、スゴイ事になってるよ」
様子をうかがっていた片桐さんが、苦笑いで私の背中を軽く叩いた。
我に返った私は、翔陽くんをにらむ。
「――子供が生意気言ってるんじゃないの!指輪は、私が自分で買います!」
そう言うと、私は片桐さんの腕を取り、翔陽くんを置き去りにして、マンションの中に入って行く。
そして、部屋の前まで来ると、頭を下げた。
「……片桐さん、巻き込んでしまって、申し訳ありません」
「いや、気にしないで。――でも、良かったね、名木沢さん」
「え」
顔を上げれば、彼は、ほんの少しだけ、さみしそうに微笑む。
「三ノ宮くんと、会う事ができるよ」
「……ハイ」
私は、しっかりとうなづいた。
――アイツに会って――本心を聞いて……。
そして――ちゃんと、けじめをつけよう。
そうしなければ――私は、先には進めないのだから――……。
「そんな打ち合わせ必要ありませんよ。――僕の言う事に、うなづいてくれていれば良いので」
「――……キミ、何を企んでいるの?」
すると、片桐さんが、腰を上げながら翔陽くんに尋ねる。
その口調は――少々刺々しい。
「――言ったじゃないですか。……僕は、兄さんに、あんな表情をさせたくないだけですよ。そして――僕達一家が交渉の材料になるのであれば――その価値を無くせば良いという結論に至りました」
「え?」
何だか、翔陽くんの言葉に違和感を覚える。
「翔陽くん……?え、まさか……ご両親は、ご存じなの?」
てっきり、彼の一存で突っ走って来たのだと思ったが。
彼は、クスリ、と、口元を上げた。
その表情は、高校生には、とても見えない。
「何も、申し上げられませんよ。――ただ、僕が、見張りを振り切れたという事実を考えていただければ」
それは――三ノ宮社長と亜澄さんも協力したという事だ。
私は、片桐さんを見上げ、立ち上がった。
「――……片桐さん、この事は――」
「わかってる、他言無用。――弟くん、信用してくれるかな?」
そう尋ねれば、彼も立ち上がり、肩をすくめた。
「新規企画班、班長さん――でしょう?口の堅さが必要な仕事をしている方を、信用しない訳にはいきませんよ」
「それはどうも」
片桐さんは、苦笑いで返すと、周囲を見渡した。
「……とりあえず、僕は帰るよ。弟くんの見張りが、どこにいるかわからないから、名木沢さんも一緒に。送った体でいないと」
「わかりました。――じゃあ、翔陽くん、私はどうすれば良いのかしら?」
何も連絡手段が無い以上、ここで、すべて決めないといけない。
任せろ、と、言われても、何をどうしたらいいのかわからなければ、どうしようもないのだ。
すると、彼は、チラリと門の向こうを見やると小声で言った。
「兄さん達とは、正午に約束しているので。羽津紀さん、今の僕達の自宅はご存じですよね」
私は、うなづいて返す。
以前、何だかんだで、亜澄さんに連れて行かれたのだから。
「なら、最寄り駅で待っていてください。――そうですね、時間は、十一時半頃に駅に着けるようにお願いします。僕が迎えに行きますので」
「わ、わかったわ」
翔陽くんは、うなづくと、思い出したように言った。
「ああ、それと――この前のような恰好でお願いしますね」
「え、あ、で、でも、あれは……」
私は、思わず、口ごもってしまう。
どうにかこうにか、ひねり出した服装なのだ。
あれと同じレベルで――しかも、違うデザインの服など、持っている訳が無い。
「なら、僕が買いますよ。駅ビルに、ハイランクの店があったと思うので」
「ちょっ……高校生に買わせる訳に、いかないでしょ!」
平然と言われ、動揺してしまう。
近頃の高校生は、そんな店にあっさりと入る事ができるのか。
「……じ、自分で用意するから……」
「ああ、でも、指輪は選ばないとなので――やっぱり、十時集合で」
「は⁉」
――指輪⁉
あっけに取られ、口を開けてしまう。
「名木沢さん、顔、スゴイ事になってるよ」
様子をうかがっていた片桐さんが、苦笑いで私の背中を軽く叩いた。
我に返った私は、翔陽くんをにらむ。
「――子供が生意気言ってるんじゃないの!指輪は、私が自分で買います!」
そう言うと、私は片桐さんの腕を取り、翔陽くんを置き去りにして、マンションの中に入って行く。
そして、部屋の前まで来ると、頭を下げた。
「……片桐さん、巻き込んでしまって、申し訳ありません」
「いや、気にしないで。――でも、良かったね、名木沢さん」
「え」
顔を上げれば、彼は、ほんの少しだけ、さみしそうに微笑む。
「三ノ宮くんと、会う事ができるよ」
「……ハイ」
私は、しっかりとうなづいた。
――アイツに会って――本心を聞いて……。
そして――ちゃんと、けじめをつけよう。
そうしなければ――私は、先には進めないのだから――……。