虐げられてきたネガティブ令嬢は、嫁ぎ先の敵国で何故か溺愛されています~ネガティブな私がちょっぴりポジティブになるまで~

 次にふと目を覚ましたのは、なんだか冷たい風を感じたような気がしたからだ。
 目を開けると部屋の中は真っ暗で、月明かりだけが辺りを照らしていた。
 深夜に月が見られることなんて、アレスでは滅多になかった。アレスはこの時期、吹雪に覆われることが多く、昼夜問わずいつも薄暗かったからだ。
 月が明るく照らす窓際に人影があるように見えた。

 ……?誰だろう……?

 寝ぼけ眼で身を起こすと、窓の外を眺めていた人影がゆっくりとこちらを振り返った。

「……ああ、起こしてしまったか……」
「ひ……っ……!」

 振り返った人物はゆっくりとこちらにやってきた。そうして私のベッドへと手を付くと、至近距離で私の顔を見つめる。
 私は恐怖で身体が動かなくなっていた。

 れ、レオナルド殿下……!!

 氷のように冷たい目と、にこりともしない表情が、私を射抜くように見つめている。
 頭の中で、先程のゼウラウス国王の言葉がこだまする。
『レオもようやくクラリス王女に会えて喜んでおるわい』

 やっぱりそんなわけない……!!

 目の前にいるレオナルド殿下は、今にも私を殺しそうな狂喜に満ちた表情をしている。そんな彼が、私に会えて喜んでいるわけがない。
 誰がどう見たって、今にも私を殺めようとしているようにしか見えなかった。

「……クラリス・フォートレット」
「は、はいっ……」

 殺される……っ、そう覚悟を決める。

「明日、私の部屋まで来てくれ」
「え……?」
「話をしよう」

 その言葉とともに細められた目に、ああ、私は明日死ぬのだと悟った。

「おやすみ」

 そう言って部屋を出て行くレオナルド殿下の背中を見送る。私は恐怖でしばらく動くことが出来なかった。

 ……やっぱり、殺されるんだわ……。

 レオナルド殿下のあの冷たく鋭い瞳。私を生きては帰さないと言わんばかりの、狂気に満ちた表情。

「束の間の休息……だったのね……」

 アレスを出た時に、覚悟は決めていた。
 やはり私なんかが、幸せになれるはずなんてなかったのだ。


< 13 / 22 >

この作品をシェア

pagetop