虐げられてきたネガティブ令嬢は、嫁ぎ先の敵国で何故か溺愛されています~ネガティブな私がちょっぴりポジティブになるまで~
「……クラリス、体調はどうだ?」
「え、あ、もうすっかり、大丈夫、です……」
「そうか、よかった」
ほっと安堵の表情を見せる殿下に、私はぽつりと言ってしまった。
「殿下は、思ったよりも表情豊かな方なのですね……」
その言葉に、レオナルド殿下は少し表情を引き締める。
「どこがだ。不愛想だの怖いだのよく言われる」
確かに会ってすぐは私もそう思った。顔立ちから冷たくきついように見えるからだ。
しかしその実、こうして私のために飛んできてくれるくらいには、優しさも持ち合わせている。
私のことを、本当に大事にしようとしてくれている……?
そんな都合の良い考えが浮かんでしまい、私は大きく頭を振る。
そんなわけない。そんな人、いるわけがない。
私は愛されてこなかった。
きっとこの先も、愛されることなんて、決してない。
「どうした? また体調が?」
私が黙り込んで俯いてしまったのを勘違いした殿下は、顔色を窺おうと私の顔を覗き込む。
そのあまりの近さに心臓が不規則に動き出す。
「だ、大丈夫ですっ!」とレオナルド殿下の胸を押し返そうとして、その手を握られてしまった。
「で、殿下……っ」
「クラリス、リビアの話は本当か?」
「え……?」
「私の愛が信じられないか?」
「……っ」
信じられない……と思う。騙されているのではないか、と未だに思う。
こんな幸せなことが本当に、私なんかの身に起きていいのかって、そう思ってしまう。
でも、ずっと、願っていた。
私を愛してくれる誰かがいて、ただただ穏やかに暮らせる日々を。
もしかしたらそれが、もう目の前に来ているかもしれないのに、ネガティブな私はそれを素直に受け取ることができない。
言葉に詰まった私をどう思ったのか、レオナルド殿下は私の手の甲に優しくキスを落とす。
「……!?」
「今はまだ、信じられなくてもいい。けれどこれから少しずつ、私の気持ちを伝えていくつもりだ。クラリスがいつか、自信を持って私の隣に立てるようになるまで」
「……殿下……」
レオナルド殿下は私の頬に優しく触れる。殿下の氷のような瞳に吸い寄せられて、目が離せなくなる。
気付けば互いの唇が重なり合っていて、私はその温かさに身を委ねていた。
この人のことがもっと知りたい。
そう強く思った。
レオナルド殿下と接していくうちに、根深くなってしまったこのネガティブな思考も、少しは明るい方へと向かってくれるのだろうか。
私なんかが、幸せを望んでもいいのだろうか。
ネガティブな私がポジティブになるまでには、まだまだ時間が掛かりそうだった。


