仕返しのつもりだったのに、溺愛されているようでなんだか幸せです
翌日、病院の中庭には、車椅子の沙羅を押す北斗の姿があった。
そこへ高柳がお見舞いに来てくれた。
「七海さん、だいぶ良くなられて良かったですね。…車に向かって突っ込んでいったあなたを見て、心臓が潰れる思いでしたよ。」
沙羅は恥ずかしそうに高柳を見た。
「申し訳ございません。…あの時は考えるより体が先に動いてしまって…。」
高柳は大きく息を吐いた。
「しかし、七海さんがこれほどまで北斗を愛していたのかと、思い知らされました。愛の力はすごいですね。」
「高柳さん、止めてください…恥ずかしくなってきます。」
沙羅がパタパタを真っ赤な顔を手で仰いで見せた。
すると北斗は沙羅の頬に手を当てたのだ。
「俺はすごく嬉しかったですよ…でも、もう危険な事はしないでくださいね。」
するとそこにコツコツと靴音を響かせて女性が近づいて来た。
なんと、近づいて来たのはキャロルだった。
沙羅は緊張して身構えるのだった。
「七海さん、そんなに身構えないでくださいね。…あなたには勝てません。完敗だわ。」
「キャロルさん…ごめんなさい…あなたと約束しましたが、私は北斗さんと別れたくありません。」
するとキャロルはクスクスと笑い始めた。
「そういう誠実なところ…北斗とそっくりね。私はイギリスでもう北斗には振られていたのよ。でもね最後のお願いだけは聞いて欲しいとお願いしたの…それは日本に戻る時は恋人のふりをして欲しいとね。」
キャロルは空を見上げるように上を向いた。
「あ~あ、もう最後のお願いも終わってしまったわ。だから北斗はあなたにお返ししないとね…沙羅さん、北斗と絶対に幸せになりなさいよ…この私が譲ったのだから幸せにならなかったら怒るわよ。」
「はい…必ず幸せになります…見ていてくださいね。」
「言ってくれるわね。」
キャロルはヒラヒラと手を振って去って行ったのだった。