仕返しのつもりだったのに、溺愛されているようでなんだか幸せです
前原社長が不機嫌そうに声を出す。

「心に決めた女性?…そんな嘘を誰が信じると言うのだ。」

しかし、霧島社長は真っすぐに前原社長を見て話しを続けた。

「嘘ではありません。その女性は…この場所にいます。」

前原社長が怪訝な表情をする。

「ここだと?…どこにいるというのだ。」

するといきなり霧島社長は沙羅の手を掴んで微笑んだのだ。
沙羅は意味が分からず、そのまま動けずにいると…。


「ここにいる、七海沙羅さんが私の心に決めた女性です。」


沙羅は驚いて目を大きく見開いた。
何を言っているのか、まったく分からない。

前原社長と娘は驚いた表情をしたが、すぐにそれは怒りの表情へと変わった。


「霧島社長、失礼だがその秘書よりうちの娘の方が絶対に君に相応しい女性だ。外見だってそんな地味な女性よりうちの娘の方が華があるぞ。」


前原社長の言葉を聞いて霧島社長はいきなり立ち上がった。


「私の大切な女性(ひと)に対して、そのような言い方は失礼ではありませんか。もうビジネスの話もする必要は無さそうですね。」


霧島社長がそのまま部屋を出て行ってしまったので、高柳と沙羅も会釈をしてすぐに後を追いかけるように部屋を出た。
前原社長が呼び止めようと何か声を出していたが、霧島社長は振り向くことなくすたすたと歩いて行ってしまった。

エレベーターを降りて社用車に乗り込むまで霧島社長は一言も声を出さなかった。

車の中で高柳が大きく息を吐いた。


「社長…いいや北斗…あんな事を言ってよかったのか?」


すると霧島社長も呆れたように大きく息を吐く。


「まったく、あの親子には困ったもんだ。…だがこれで俺のことは諦めるだろう…ビジネスだって父の会社から世話になっていたが、最近ではこちらの不利になる取引ばかりしてくる…はっきり言って迷惑で切りたかったんだよ。」

「しかし…七海さんを巻き込むなんて…嘘はすぐにバレるぞ。どうするつもりなんだよ。」


「嘘じゃなければいいだろ。」



< 27 / 143 >

この作品をシェア

pagetop