仕返しのつもりだったのに、溺愛されているようでなんだか幸せです
「そんな怯えた表情しないで…といってもいきなり声をかけられたら怪しむよね。」
その男性はふわりと笑顔を見せた。
「会社では営業部の部長職というだけで内緒にしてるけど、僕は北斗の兄貴なんだ。優秀な弟に会社は任せているけどね。」
沙羅はその言葉を聞いて思い出した。
営業部で部長のこの男性は何度か社内で見かけたことがあったのだ。
「北斗さんのお兄様?ですか。」
するとその男性はうんうんと小さく頷いた。
「僕は、霧島太一というんだ。よろしくね…でも君はどうしてこんな夜中に裸足で…何かあったのかい?」
沙羅は緊張の紐がプツリと切れたように、ポロポロと涙を流したのだった。
その姿を見て慌てた太一は沙羅に自分のハンカチを差し出した。
「と…とりあえず、北斗に連絡するからそれまで僕の家においで…すぐ近くなんだ。あっ、大丈夫だよ僕は結婚していて奥さんも家にいるから心配しないで来て欲しい。」
沙羅はご迷惑をかけたくないと思ったが、今は誰かに頼るしかない状況だ。
「…ありがとうございます。お世話になります。」