仕返しのつもりだったのに、溺愛されているようでなんだか幸せです
沙羅は多岐に止められたが、家事を手伝わせて欲しいとお願いをして部屋の掃除などをすることにした。
何かしていないと落ち着かない気分だった。
部屋は定期的にホームヘルパーの人が来ており、掃除はしてくれるようだが北斗の書斎は仕事の書類などもあるので掃除を断っていたようだ。
そっと北斗の書斎を覗くと、PCの周りに書類が無造作に山積みになっていた。
「仕事関係のところは触らないようにして…掃除しよう!」
沙羅は独り言を呟くと、北斗の書斎を掃除することにした。
当たり前だが部屋は北斗の香りがする。
いつもつけているシトラス系の爽やかな香りになぜかドキドキしてしまう。
その時だった、気を付けてはいたが沙羅が棚にぶつかってしまい、一冊の本が棚から落ちてしまった。
急いで拾ろおうと手を伸ばした時に、沙羅の手は止まった。
「これって…北斗さんの写真…そしてこの女性は…誰…。」
落ちた本の横には一枚の写真が落ちていたのだ。
本に挟まっていたと思われるその写真には、北斗と美しい女性が笑顔で写っていたのだった。
考えてみたら、北斗に恋人がいたとしてもおかしくはない。
本当の夫婦ではないのだから、私が何か言う立場ではない。
頭では理解しているが、なぜか心が締め付けられる。
自分でもこの胸の痛みに驚いたくらいだ。
私は…いつしか北斗さんに向かって、持ってはならない感情を持ってしまったのかも知れない。
これは偽りの結婚なのだから、北斗に惹かれてはいけないのだ。
沙羅はそっと写真を本に挟んで元の棚に戻した。
そして大きく深呼吸。
「私ったら何を考えているの。これは偽りの結婚なんだからね。」
沙羅は小声で呟いて自分に言い聞かせたのだった。