仕返しのつもりだったのに、溺愛されているようでなんだか幸せです
どのくらい時間が経った頃だろう、霧島社長は思い出したように私の方を振り返り話し始めた。
「そういえば、腹が減ってこないか?恐らく君も何も食べていないだろ。なんか美味しい物でも食べるとするか。」
「あの…でも私は…」
彼は私の返事も聞かずに、すたすたと車へ戻り運転席に座った。
「早く乗ってくれ。ここに置いて行かれたいのかい?」
私は慌てて助手席へと戻った。
助手席に座った私に向かって、霧島社長が微笑んだ。
美形男子の破壊力は心臓に悪い。
「今日は特別だぞ。俺のとっておきの場所に連れて行ってやる。」
社長のとっておきの場所とはどんなところだろう。
沙羅は高級レストランを想像していた。
ただ、どんな高級な料理でも今は喉を通る気がしない。
しかし、車は想像とははるかに違う場所に向かったのだった。
ここは高級車が似合わない、木造の小さな店が並ぶエリアだ。
昔ながらの赤提灯が吊り下げられ、どこか懐かしい雰囲気の店が並んでいる。
社長は店から少し離れたパーキングに車を止めると、
大きな赤提灯のぶら下がる店に向い、暖簾をくぐって中に入ってしまった。
私が慌てて追いかけるように中に入ると、店の真ん中にあるカウンターから元気な声が聞こえて来た。
「いらっしゃいませ!どうぞお座りください。」
カウンタ―の中の男性は、ねじり鉢巻きにはっぴのような服を着ているが、霧島社長と同じ年くらいでその男性もかなりのイケメンだった。
髪は短髪に刈り上げているが、目鼻立ちははっきりしていて身長も高くスタイルも良い。
私が驚いて固まっていると、その男性が私達に話し掛けて来た。
「北斗がここへ女性を連れて来たのは初めてだな。どういう風の吹き回しだ?」
すると霧島社長は私に向かって説明を始めた。
霧島社長を北斗と名前で呼ぶほど親しい関係のようだ。
「ここの店の大将は山本大介と言って大学時代からの腐れ縁だ。大介は以前はうちの会社で働いていて同期入社なんだ。」
私は紹介してくれた大将の山本さんへ、慌てて姿勢を正して挨拶をした。
「初めまして…私は七海 沙羅と申します。アジアンリゾートに入社して3年目です。」
山本さんは私の挨拶を聞くと、ニヤニヤと笑いながら霧島社長に話し始めた。
「おい北斗、とうとうお前は部下に手を出したな…誰にも興味を持たないお前には良い傾向だ。」