仕返しのつもりだったのに、溺愛されているようでなんだか幸せです
走り出した車の中で、私は自分の住所を伝えようとした。
「社長…送ってくださりありがとうございます。住所は…」
すると私の言葉を遮るように社長が話し始めた。
「帰っても一人だろ?だったらちょっと付き合ってくれ。」
私を気づかってくれているのは分かるが、どこに向かっているのだろう。
車は1時間ほど走ると遠くに海が見えて来た。
今日は天気も良いため海面がキラキラと光り輝いているのが見えて来る。
海の上に架かる長い橋を車が走り出した時、霧島社長は静かに話し始めた。
「海はこうして見ると本当にでかいよな。俺はいつも悩んだり気分が落ち込むと海の見えるところに行くんだ。…なんかこの大きな海を見ていると、自分なんてすごくちっぽけで、悩んでたことなんて本当に小さなことに感じて来る…するとなんだか悩んでいたことがバカバカしく感じてくるんだよな。」
確かにこの大きな海をみると自分がとても小さな存在だと感じる。
蓮のことは許せないが、あんな男のために怒ったり悩んだり泣いたりするのがバカバカしくも感じて来るようだ。
少しして小さな砂の浜辺がある近くに車を止めると、社長は車から歩き出して沙羅に手招きをした。
「七海さん、風が気持ちいいですよ。」
社長に呼ばれて車を降りると、海の香りが鼻から体の中へと沁み込んでいくようだ。
私は大きく息を吸って深呼吸した。
すると、体の中の何かくすぶっていたものが外に吐き出されたように感じる。
霧島社長は何も言わずにただ海をしばらくの間眺めていた。
あえて何も話さずそっとしてくれている事に私は救われた。