魔女と忌み嫌われた私、売られた隣国で聖女として次期公爵様に溺愛されています
「聖女であることを公表ですか?」
初めて足を踏み入れたユーグの執務室。王太子の執務室だが意外と内装は普通だった。ただ机一つとっても研究室にあるものとは艶が違うのでおそらく見た目以上に高価なものだろう。ゆったりとした中には、大きな本棚と机が二つ。そして応接セットがあった。
騎士に連れられたアリーセを迎えてくれたのは、騎士の言うとおりユーグとレナールだった。
ユーグはいつも通りにこにこしていて、レナールは無表情だった。二人の通常運転だ。
気さくな性格のユーグが、アリーセに応接セットの黒革のソファに座るように促す。そしてアリーセに続くように、ユーグとレナールが座った。
そしてユーグから切り出されたのが、聖女だと公表しないか、という話だった。
少し前まで魔女と忌み嫌われていたのにすごい違いだなと思ってしまう。
「デュラックの件で何者かが回路を浄化したということがばれてしまった。そして、消去法で君が聖属性の魔力の持ち主、つまり聖女じゃないかという話が広まっているんだ。レナールがいきなり聖属性の魔力を持ったという話よりも現実的だからね」
そして、アリーセが聖女だと信じた人々より、豊穣の魔法を使ってほしいという嘆願書めいたものが来ているらしい。さらには聖属性目当ての縁談も山ほど来ているそうだ。
「全然気づきませんでした……」
初めて明かされる事実にアリーセは呆然とする。
もともとアリーセがあまり人と接する状況にないのもあるのだろう。生活はほぼ公爵邸と魔法研究所の往復。そして通勤はレナールと一緒だ。
「まあ、レナールがガチガチに君を守っていたからね」
ユーグが意味ありげに笑う。アリーセの視線を感じたらしいレナールが、ごほんと咳払いをした。
「守ると君に約束したからな。――だが、こうなってしまった以上、きちんと発表した方がいいのではないかと思っている。ピリエとして君を保護できるから」
「最初に宣言しておくけれど、王家としては君を保護するけれど利用するつもりはないよ。この先原因不明の流行病が発生した場合には協力を頼むかもしれないけれど、それくらいは許してほしいかな。君自身でやりたいことを選んでほしい」
初めて足を踏み入れたユーグの執務室。王太子の執務室だが意外と内装は普通だった。ただ机一つとっても研究室にあるものとは艶が違うのでおそらく見た目以上に高価なものだろう。ゆったりとした中には、大きな本棚と机が二つ。そして応接セットがあった。
騎士に連れられたアリーセを迎えてくれたのは、騎士の言うとおりユーグとレナールだった。
ユーグはいつも通りにこにこしていて、レナールは無表情だった。二人の通常運転だ。
気さくな性格のユーグが、アリーセに応接セットの黒革のソファに座るように促す。そしてアリーセに続くように、ユーグとレナールが座った。
そしてユーグから切り出されたのが、聖女だと公表しないか、という話だった。
少し前まで魔女と忌み嫌われていたのにすごい違いだなと思ってしまう。
「デュラックの件で何者かが回路を浄化したということがばれてしまった。そして、消去法で君が聖属性の魔力の持ち主、つまり聖女じゃないかという話が広まっているんだ。レナールがいきなり聖属性の魔力を持ったという話よりも現実的だからね」
そして、アリーセが聖女だと信じた人々より、豊穣の魔法を使ってほしいという嘆願書めいたものが来ているらしい。さらには聖属性目当ての縁談も山ほど来ているそうだ。
「全然気づきませんでした……」
初めて明かされる事実にアリーセは呆然とする。
もともとアリーセがあまり人と接する状況にないのもあるのだろう。生活はほぼ公爵邸と魔法研究所の往復。そして通勤はレナールと一緒だ。
「まあ、レナールがガチガチに君を守っていたからね」
ユーグが意味ありげに笑う。アリーセの視線を感じたらしいレナールが、ごほんと咳払いをした。
「守ると君に約束したからな。――だが、こうなってしまった以上、きちんと発表した方がいいのではないかと思っている。ピリエとして君を保護できるから」
「最初に宣言しておくけれど、王家としては君を保護するけれど利用するつもりはないよ。この先原因不明の流行病が発生した場合には協力を頼むかもしれないけれど、それくらいは許してほしいかな。君自身でやりたいことを選んでほしい」