女王陛下は溺愛禁止!

***

 アンジェリアは政務の合間にクライドを見舞った。ラドウィルトは付き添いとしてついていく。
 クライドは医療官の指示通りに大人しく過ごし、神官の治癒魔力のおかげもあって順調に回復した。

 訪問の際は医療官もラドウィルトも部屋の外で待機した。
 楽し気な笑い声が漏れて来てもラドウィルトは無表情でやりすごす。
 刻限でございます、と迎えに行くと、アンジェリアは穏やかな笑みを浮かべていた。

 最近では見たことのないほどくつろいだ笑み。クライドもまた笑顔だ。ふたりの間の和やかな空気はラドウィルトとの間では到底ありえないものであり、胸がしめつけられた。
 アンジェリアとの間には緊張を伴うことが多い。国の先行きを決めるのだから間違いは許されない。そういう綱渡りの感覚が常にあった。

 もし自分と結婚したならば、アンジェリアは絶えず緊張にさらされるのだろう。
 ならばやはり、クライドのような穏やかな空気を作れる存在のほうが彼女には必要だ。

 結婚の話はまだ彼には伝えていない。
 だが、彼も悟っているはず。
 通常、貴族であれば妙齢の男女をふたりきりにすることなどない。王族ならなおさらだ。であるにも関わらずその状況が発生している。気が付かないほうがおかしい。

 クライドは一週間もするとベッドから起き上がるほどになり、通常の食事を摂ることができるまでになった。
 医療官の許可を得て、アンジェリアはクライドをお茶に誘った。

 いよいよだ、とラドウィルトは拳を握る。
 アンジェリアが結婚の話を彼に伝える。
 クライドは了承するだろう。そもそも求婚のために来ていたのだから。
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