女王陛下は溺愛禁止!
「私の命は陛下のもの。陛下の(めい)なくば動けません」
「ならば、もし陛下に死ねと言われたら死ぬのですか」
 ラドウィルトはただ微笑を浮かべた。
 マリオンはまた愕然とした。

 彼の笑顔がすべてを物語っている。
 彼は、彼のすべてをアンジェリアに捧げているのだ。マリオンがなにを言おうとも、動くことはないだろう。

「……わかりました。悲しいことですが」
 マリオンはそうして手をラドウィルトに伸ばす。
 なにを、と思ったときには後ろから頭を殴られていた。

 倒れた彼の目にマリオンの靴が見える。
 すぐにその視界がぼやけ、ラドウィルトは意識を失った。
 あとにはマリオンが悲し気に立ち尽くしていた。

***

 警備総隊長グレイソンとの面談から執務室に戻ったアンジェリアを待ち構えていたのは、ドライフルーツの入ったマフィンを貪るエアだった。長椅子に寝そべってもぐもぐと食べていたエアはアンジェリアを見ると目を輝かせて立ち上がった。パンパンと手を払うとマフィンも食べかすもパッと消える。

「なにしにきた」
 アンジェリアの眼光は鋭く、声は低い。
「やだなあ。慰めに来てあげたのに」
 その言葉で、今回の騒動をエアも知っているのだとわかった。

「神であるならば、ラドウィルトの無実を証明してくれはせぬか」
 どうせできないだろうと思って口にしたのだが。
< 142 / 204 >

この作品をシェア

pagetop