女王陛下は溺愛禁止!
「できるよ」
「本当か!?」
 アンジェリアは思わず身を乗り出した。

「俺に愛を誓ってくれたらね」
「またそれか。ならばいい」
 アンジェリアは嘆息した。
 できるというのは戯れに過ぎなかったのだろう。溺れる者は藁をもつかむというが、つかんだところで沈溺は必定(ひつじょう)。つかむものを間違えてはならない。

「もうちょっと行動に移して頼めばなにかしてあげるかもしれないよ。例えばキスしてくれるとか」
 エアの瞳が艶を宿すが、アンジェリアは一顧だにしない。
「道化が過ぎる」
 突き放され、エアは肩をすくめた。

「けっこう潔癖。そこも好みだけど」
 くすくすとエアは笑う。
「愛のためにはなんでもするっていうタイプじゃないんだ?」
「気持ちの悪いことを言うな。あやつとの間に愛などない」
「ふうん?」
 エアは面白そうに答える。

 宙に浮いた彼はぐるんと逆さまになってアンジェリアの前に立つ。
 驚いた彼女は目を丸くして彼を見た。

「意地をはるアンジェリアもかわいいけど。大丈夫、いつだって俺がついてるから」
 エアは愛し気に目を細め、アンジェリアの頬を撫でる。
「や、やめろ!」
 アンジェリアは慌てて体を離し、エアはくすくすと笑う。

 彼はふいに、なにか遠くの物音に耳を傾けるような仕草をし、それから手をさっと振る。
 青い薔薇が生まれた。花弁はサファイアのように透き通り、茎は金色をしている。
 エアはアンジェリアの髪にそれを挿して幼い子にするように頭を撫でた。

「かわいいアンジェリア。またね」
 言った直後、エアは姿を消した。
「今の、どこかで……」
 アンジェリアは目をまたたかせ、誰もいなくなった空間を見つめていた。
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