女王陛下は溺愛禁止!
「だからこそです。陛下ならば必ずや公正に無実を証明してくださるでしょう。なのに逃奔(とうほん)するなど背信と変わりません」
「兵たちは陛下とは違うのですよ。証拠まででっち上げられたらどうするのですか!」
「そのときは甘んじて刑を受けましょう。ですが、陛下の国にそのような不正があるとは思いません」

 毅然と返され、マリオンは立ち尽くす。
「厚い信頼がおありなのですね」
 ラドウィルトは頷く。

 彼女はいつも努力を続けて来た。弱気になる彼女も知っている。やけになってラドウィルトにやつあたりをしてきたときもあった。
 だが、苦しい時間を共に乗り越え、彼女が逃げることなく懸命に国を作ってきたのを見ている。

 だから。
 ラドウィルトはマリオンをまっすぐに見る。

「だから私は逃げません」
 マリオンは悲し気にラドウィルトを見返した。

「実を言うと、これは陛下の(めい)なのですよ」
「陛下が?」
「ええ、あなたを逃がすように、私に極秘にお命じになられました」
 ラドウィルトは顎に手を当て、少し考える。

 マリオンが嘘をつくとも思えない。
 だが、彼女の気性からしてそんな命令を下すとは思えない。こんなことに彼を巻き込まないはずだ。

「いえ、やはり残ります。陛下からの直接のお言葉がないのですから。マリオン殿は見つからぬうちにお戻りを」
「どうしてそのようにかたくななのですか。御身の行く末に関わるというのに」
< 141 / 204 >

この作品をシェア

pagetop