女王陛下は溺愛禁止!
「女王の道化であり、陛下の機嫌を損ねたい人間はおりませんからね。あの顔では陛下の愛人だと誤解する者も現れそうですが。もし思いを通じ合わせる女性が現れた場合にはどうされるおつもりで?」
「そのときに考えることにしよう」
 その目が噂の人物を捕え、立ち止まる。

「あそこにおるぞ」
 顎をくいっと動かして示す先で、エアが若いメイドと話していた。

「実はさ、俺って神なんだよ」
「あら素敵」
 メイドはくすくす笑う。

「信じてないね」
 エアが軽く手をふると、どこからともなく現れた白い花が一輪、握られている。
「どうぞ、綺麗な人」
 エアが跪いて花を差し出すと、彼女は笑顔で受け取った。

「素晴らしい奇術ですこと!」
「俺は運命の女性(ひと)を探して人の世にいるんだけど……君がそうなのかな」
 メイドはくすくす笑った。
「女王陛下から道化の戯言を本気にせぬようにと仰せつかっております」

「戯言なんて! 本気なのに!」
「お花、ありがとうございます。私は仕事がありますので失礼します」
 メイドは頭を下げて彼の前から立ち去った。

「そんな……」
 追いかけようとしたエアは、くつくつと笑うアンジェリアに気がついて立ち止まる。
「道化の道化たる姿、楽しませてもらったぞ」
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