女王陛下は溺愛禁止!
 アンジェリアはめんどくささに眉を寄せたものの、ラドウィルトに目で促され、男の手を取り、踊る。
 男のリードは独りよがりで、アンジェリアが合わせてなんとかなる程度だった。ダンスですらこのさまでは普段はまったく人に合わせないだろう。

「陛下は大変にお美しい。本日のわたくしの衣装は陛下のイメージで作らせたのです」
「そうか」
 アンジェリアは嫌悪に目を細める。私はそんなにごてごてとけばけばしくしていないぞ、と。

「わたくしの姿絵は御覧いただけましたか」
「覚えがないな」
 この男の印象は記憶になかった。よほど顔を変えて描かれていたのだろう。

「なんとつれない。わたくしめがどれほど陛下に焦がれているか、おわかりになりませんでしょう。恋の女神のいたずらに、すっかり振り回されております」
「おそらくは一生わからぬ」
 アンジェリアはうんざりと返す。これで脈がないわかってくれれば良いのだが、そうはならなかった。

「されどダンスをご了承いただいたということは憎からず思っていただけていることでしょう。できましたら今宵のひとときをくださいませ」
 つまり男女の関係になりたいという申し出だ。
「調子に乗るな!」
 アンジェリアは男の手を振り払った。

 周囲の男女が驚いてダンスをやめてふたりを見る。
 その様子に驚いた人々がまたアンジェリアたちを注目し、ざわめきが満ちた。
 オーケストラは曲を終了するが、次の曲を奏でる様子はない。

「お、俺は身分こそ伯爵だが、リストン王国の王族につらなるひとりだぞ! 世が世なら王子だったんだ! 無礼なふるまいは許されない!」
「無礼はそちらが先だ。王族とは言うが、そなたの名は聞いたことがない」
 アンジェリアは言い返す。実際には王子じゃないんだからすっこんでろ、と意味をこめて。
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