女王陛下は溺愛禁止!
「申し訳ございません!」
 人垣を縫ってリストンの大使が飛び出し、頭を下げる。
「我が国には侮辱や敵対の意図はまったくございません、どうかお汲み取りいただけますよう、お願い申し上げます」

「わかっておる。だが、その者は下がらせる」
 アンジェリアが言った直後、ラドウィルトが近衛に目で合図をする。
 ふたりの近衛が男の両腕を左右からがっちりと掴んだ。

「な、なにをする!」
 喚く男をひきずるようにして、近衛が会場の外に連れ出す。

「陛下を怒らせたぞ」
「処刑になるかもな」
「そんなことして戦争にならないといいが」
 ひそやかな会話がアンジェリアの耳にまで届く。
 冷酷な女王の印象のせいで、すぐに処刑をするものと思われているようだった。

「大使殿、酒が過ぎれば醜態をさらすことがある。この件は貴国との関係を悪化させるものではないことを約束する」
 男は酔ってなどいなかったが、深酒の上での醜態であるとすることで不問にするというアンジェリアの配慮だった。
 これで貸しができたことになり、今後の外交は有利になる。

「ご厚情ありがたく存じます」
 大使はほっとしたように深々と頭を下げる。

「ラドウィルト、私は下がるが会は続けさせろ。客に楽しんでもらえ」
「えー、もう帰るの?」
 エアが不満そうに言う。

「陛下、どうかお待ちを」
 新たな声にそちらを向くと、黒い服の青年が礼をして佇んでいた。
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