女王陛下は溺愛禁止!




 ラドウィルトが自身の仕事をするために執務室を辞したあと、ひとりになったアンジェリアは大きく息をつき、頭を抱えた。
「あいつらはなんてことを言うんだ」
 思い出されるのは先程のエアとラドウィルトの発言だ。

『ラドウィルトって陛下のことが好きなわけ?』
『もちろん好きですよ』
 彼はいつもと変わらない真面目な顔でそう言った。だから本気のように見えてしまい、アンジェリアはどきっとした。必死に無表情を装ったが、もしバレていたらと思うとどうにも恥ずかしくてたまらない。

「どうしてあんなことを言うんだ、バカ道化! あいつもあいつだ!」
 ここにいないふたりを罵るが、頭から消し去ることはできない。

 昨夜は昨夜でクライドから手にキスをされてしまった。手とはいえ男性にキスされるなど、どれだけどきどきしたことか。
 これまでにも男性からの敬愛を示すキスの経験はあるが、ときめくなんてことはなかった。
 クライドは今読んでいるのお気に入りのシリーズのヒーローに似ていて、多少なりとも緊張していた。その上さらにキスと言われて、どきどきしないわけがない。

「結局は私も女ということか。うんざりする」
 叔父と戦うと決めた時点で、女であることは捨てたつもりだった。
 だが、自分の女性性を切り離すことはできない。溺愛小説を隠れてこっそり読むなど、その象徴と言える行為だろう。

「今さら恋など」
 二十七歳にもなって初恋すらまだという現状は、女としてよりも国王として大丈夫なのかと不安になるときもある。
 ときめきがイコールで恋でもないだろうし、ましてや愛など。
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