女王陛下は溺愛禁止!
 小説などの作り物なら平気だが、身に迫るそれは今となっては恐怖でしかない。
 愛ゆえに人は道を踏み外す、そう思えてならない。叔父ロマスがそうだった。あのときから愛は恐怖に変わった。エアが本当に封印された神ならば、彼もまた愛ゆえに道をたがえた存在と言えるだろう。

 だが、人は愛を賛美し、愛をはねのける者を疎外する。
 このまま国を導いていけるのだろうか。

 いや、大丈夫なはずだ。
 愛欲に溺れて国を滅びに導いた例ならばいくらでもあるが、未婚であるがゆえに国を破滅に導いた話など聞いたことがない。

 家族愛はわかっている。思いやる気持ちだって持っている。他者の愛し合い慈しみ合う気持ちは理解できる。なにより、誰かが誰かと愛し合い結婚する、それをきちんと祝福できるのだから、自分が結婚していないからといって国を導けないわけではないはずだ。

 あと数年もして甥が成長したら正式に彼を後継として指名する。そうすれば結婚などとも言われなくなるだろう。
 それでもやはり結婚を迫られるのだろうか。

 クライドならば、とアンジェリアは思う。
 彼ならば身分も申し分ない。優雅なふるまいはさすが王子。ラドウィルトも彼なら合格を出すに違いない。
 クライドの甘やかな微笑を思い出し、アンジェリアはまた頭を抱えた。

***

 部屋を追い出されたエアはひとりでむくれていた。
「仕事仕事でぜんぜんかまってくれない」
 ぷんぷんと怒りながら宮殿内を歩く。
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