女王陛下は溺愛禁止!
「せっかく神である俺が溺愛してあげるって言ってるのに」
 つぶやいてから、ふと思う。
「あれ、照れ隠しだったり?」
 言ってから、首をふる。

「たぶんそうじゃないよなー」
 封印されている間、暇だったから地上の様子を覗き見た。それくらいの力はあったから。
 そうして、人の感情の揺れ動きを学んだ。
 自分が思うより人は単純で複雑だった。
 その矛盾が面白いし、もう少し遊んでいたい。

 虹色の目が、ふとひとりのメイドに向く。
 彼女は長い亜麻色の髪を三つ編みにして、大きな眼鏡をかけている。
 メイドは携帯用の筆記具でなにか書いていたが、それを懐にしまってからきょろきょろと周りを見回す。ひとけがないのを確認し、ひとつの扉をそーっと開ける。

「なにしてんの?」
 近付いて背後から声をかけると、彼女はびくっと振り向いた。

「わ、私……最近雇われたんですけど、迷ってしまって」
「奇遇だね、俺も最近来たの。仲良くしてね、俺のこと愛してくれてもいいよ!」
 エアは彼女の手を握る。

「ひい!」
 メイドは手を振り払って走って逃げた。

「みんなしてひどい。俺のことなんだと思ってるの。神様だよ?」
 エアは深いため息をついた。
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