女王陛下は溺愛禁止!
3
夜になって降り出した雨は強くなる一方で、勢いよく窓を叩く。
不安を誘う音に包まれ、アンジェリアはベッドで布団をかぶり直す。
眠りについていくらかたったとき、夢はふいに訪れる。
薔薇の咲く四阿で、五歳のアンジェリアは家族とお茶をしていた。
母は穏やかに優しい微笑を浮かべていて、いつもは厳しい表情の父も、このお茶会でだけは優しい笑みを見せる。
アンジェリアは妹とともに一生懸命に淑女の真似をしてお茶をたしなむ。
このひとときが好きだった。両親は週に一度はこの時間を作ってくれて、普段はなかなか会えない父に、レイジェリーナと競って抱っこをせがんだ。
平等にね、と母が笑って、レイジェリーナと交代で抱っこをしてもらった。
母が亡くなったあと、父から笑みが減った。立太子の式を終えたアンジェリアは本格的に王位継承者としての教育を受けた。父は王太子となった自分に厳しくて、心が凍えそうだった。
だが、週に一度のお茶の時間だけは特別だった。父は王から親の顔に戻り、姉妹とともにお茶を楽しむ。
辛いことはないか、と尋ねる父に、大丈夫、と答えるのが常だった。
実際には、ひとつだけ困ったことがあった。
ときおり訪れる従兄のダルトンの存在だ。
「女は王になれない。だから俺とお前が結婚して俺が国王になるんだ。だから俺にかしずけ」
彼はそう言ってアンジェリアが自分のものであるかのように振舞う。
叔母はそれを、まるで微笑ましいものを見るかのように眺めている。侍従がやんわり止めても彼女らは止まらない。
この叔母は以前から苦手だった。息子を溺愛して、次期国王はダルトンだと宣言して憚らない。父である国王が諌めても夫である叔父が諫めても「国王は男がなるもの」と譲らなかった。