女王陛下は溺愛禁止!
 男はダルトンを打ちのめし、助けてくれた。
「ご無事でよろしゅうございました」
 ほっとした声に、彼女は涙をこぼす。

「ラドウィルト!」
 その名を呼んだとき、アンジェリアはがばっと起きた。
 呼吸が乱れ、肩で息をしている。
 周囲を見回し、自分がベッドにいることにほっとする。夜着は乱れていないし、部屋には誰もいない。

 大きく息をしてから、額に手を当てて俯く。
 あのときの夢を見るなんて。

 あのとき、いつもならアンジェリアについている護衛が休憩の指示を受けていることに気付いたラドウィルトが、慌てて彼女を探しに来たのだ。
 あれ以来、彼は自分にべったりと侍り、護衛の数を増やした。

 アンジェリアがひとりになるように仕組んだのはダルトンであり、彼女を手に入れるためにそうしたのだとわかった。
 叔母はダルトンがアンジェリアを愛しているがゆえだと言い張り、ダルトンに罪はないと謝りもしなかった。
 変な噂が立つのを嫌ってこの件は公表されず、したがってダルトンも罰を免れた。

 ロマスは知ってか知らずか再度ダルトンとの縁談を持ち込み、アンジェリアは断固として断った。
 謀反はその直後だった。
 妻と息子への愛ゆえに謀反を起こした叔父。
 そのような愛が人を幸せにするとは思えない。そんな重い愛なんて荷物にしかならない。

 叔母は愛ゆえに息子を歪めて育てた。愛は常にそんな危険をはらんでいる。
自分だって両親に愛されて育った自覚はある。自分がまともに育ったのは運が良かっただけなのか。いや、実は自分もまともではないのかもしれない。

 王座はそれほどまでに欲しいものだろうか。それほどまでに子に与えたいものだろうか。
 アンジェリアにはわからない。重責ばかりで、政務をこなしても達成感より、無事であったときの安堵しかない。

 父は自分に王座を譲ることをどう思っていたのだろう。
 答えのない問いに、アンジェリアは窓を見る。
 外には相変わらずの雨がざんざんと降り注ぎ、夜を埋め尽くしていた。
< 75 / 204 >

この作品をシェア

pagetop