女王陛下は溺愛禁止!
「ラドウィルト様が一緒にいてくださって嬉しく思います」
 そう言ったアンジェリアに、彼は首を振る。
「ラドウィルトとお呼び捨てくださいませ。これからは私が陛下をお支えいたします」
 強い瞳だった。だからなにも言えずに深緑(しんりょく)の目を見つめ返した。
 周囲は大人ばかりで心細かった。歳が近い彼もまた自分とは距離を取る。そのことが悲しく寂しかった。

「陛下、どうなさいましたか」
 問われて、はっと我に返る。
「では、ラドウィルト、これからよろしくお願いします」
「頼むのではなく、ご命令くださいませ。あなたは女王となられたのです」
 当時の彼の言葉はアンジェリアに立場の重さを自覚させるものが多かった。

 ラドウィルトと同い年のダルトンは奉職もせずに遊び歩き、顰蹙を買っていた。
 アンジェリアは政務に振り回され、しがみつくように仕事をこなした。
 疲労はたまる一方で、気が休まるときがない。

 あるとき、アンジェリアはひとりで庭園を歩いていた。
 完全にひとりになるなどめったにないことだった。
 戴冠して半年近くたつが、いまだに女王であることになじめない。常に護衛がはべり、息つく暇もない。

 だからひとりになった時間が嬉しくて、家族の思い出深い薔薇園をゆったりと歩いた。
 香りに誘われて奥の小路に入ったとき、脇から伸びた手にひきずりこまれた。
 悲鳴を上げる間もなく口を押えられ、恐怖におびえる。

「騒ぐなよ」
 命令するのは従兄のダルトン。吐く息は酒臭い。
「どうせお前は俺のものになるんだ。」
 ぎらついた目は欲望に満ちており、アンジェリアには恐怖しかない。
 そこへ飛び込んだ男がいた。
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