女王陛下は溺愛禁止!
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クライドが滞在してしばらくののち、噂はどこからともなく生まれ、加速度的に広がった。
「王子と仲睦まじいのですって。ようやく陛下もご結婚なさるのね」
「冷酷なアンジェリア様にはお優しいクライド様がちょうどいいわよ」
「クライド様がベタ惚れっていう話らしいじゃない」
「見目よく気立ても良い方が王配になられたら、そんな嬉しいことはないわよねえ」
「陛下が晩餐に呼んだ令嬢たちには目もくれず、陛下だけに一筋だったとか」
メイドのみならず侍女や宮廷仕えの貴族たちの間でも噂はささやかれる。
舞踏会で女王の癇を鎮めてみせた優れ者。
女王も憎からず思っており、茶会を開いては彼を招く。妹をわざわざ呼び寄せてもてなすなど特別扱い。
ラドウィルトから噂の報告を受けたアンジェリアはため息をついて天を仰いだ。
「やられた」
「外堀を埋められましたね」
噂はクライドが人を使って流したのだろうと推測できた。事実を織り交ぜてうまく練り上げたものだ。恋の話が大好きなメイドや貴族女性たちにはあっという間に広がり、彼女らから聞いた夫たち……つまりは宮廷に努める貴族たちの耳にもすぐに入る。
「まだ完全ではない。さっさと追い返せば済むだろう」
「議会では彼を推す声が強くなっていますが」
「彼のほうがいろいろと都合がいいのであろうな」
昨日の会議では、最後にアンジェリアの婚姻についても議題に上がっていた。
クライドほど良い相手はいない、という論調ばかりだった。早計に決めるものではないと否定しても議員たちは先走る。
国内の貴族から王配を選べばその貴族に勢力が偏る危険がある。
だが、外国の王子ならば国内の特定の貴族が贔屓されることもなく、和平を保つうえでも有効性が高い。交易事業を行う貴族もいるため、和平存続が約束される婚姻は歓迎なのだろう。