女王陛下は溺愛禁止!
「心得まして。そなた、こちらを置いたらお茶を四人分お持ちして」
 アンジェリアとクライド、エアとラドウィルトで四人分だ。
「かしこまりました」
 メイドは答え、護衛の間を抜けてお盆を持って四阿へと歩いてくる。

 四阿のテーブルに戻ったアンジェリアはふと違和に気が付く。
 メイドの足取りに緊張が見て取れた。下級メイドならともかく、上級メイドが王族を前に緊張で震えるだろうか。新人なのか、他国の王族がいるからか。

「待て」
 声を掛けると、メイドはケーキを投げ捨てて突進してきた。
「父の(かたき)!」
 メイドは隠し持っていたナイフをアンジェリアに向ける。
 アンジェリアは席を立つが椅子に足をとられてぐらつく。

「陛下!」
 クライドが飛び出し、アンジェリアをかばった。
 ナイフが彼の腹に刺さり、呻く。

「クライド殿!」
「なんであんたが!」
 メイドが叫び、ナイフを引こうとする。が、クライドはその手を掴む。下手にナイフを引き抜かれたら傷が広がるし出血も増える。ぎり、と力をこめるとメイドの顔が痛みに歪み、手がナイフから離れた。

「陛下!」
 護衛が四阿に飛び込み、メイドを取り押さえた。
「離せ! あいつを殺す!」
 メイドがもがくが、護衛たちは彼女を捕まえて離さない。

「クライド殿!」
 アンジェリアが支えようとするのをクライドは手で制し、柱によりかかる。

「陛下のお衣裳が汚れてしまいます」
「言ってる場合か! 早く医療官を呼べ! 神殿にも伝令を! 治癒能力のある神官を呼ぶんだ!」
 護衛に命じると、クライドがにやりと笑う。

「瞬時の御采配、さすがでございます」
 彼の体がぐらりと揺れた。
 そのまま柵を超えて池の中へ落ちる。

「クライド殿!」
「陛下はお下がりください」
 身を乗り出すアンジェリアを護衛が止め、別の護衛が池に飛び込む。
 水面に広がる真っ赤な血に、アンジェリアは蒼白な顔をして立ちすくんだ。
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