女王陛下は溺愛禁止!
第四章

***

 ラドウィルトはアンジェリアの茶会の様子を護衛とともに少し離れた場所から見守っていた。
 話し声は聞こえても内容は聞こえない、そんな距離だ。
 ふいにアンジェリアがバランスを崩し、ラドウィルトはとっさに駆け出そうとした。

 が、それより早くクライドがアンジェリアを抱き留める。
 そのままふたりが話し込むに至り、護衛はさりげなく四阿に背を向け、警戒を続ける。

 ラドウィルトは息をのみ、目を背ける。
 アンジェリアがすぐさま彼を拒絶しなかったことに、少なからずショックを受けた。

 彼女はいつも男性を退け、ラドウィルトとともに政務に励んで来た。
 自分は心のどこかで、ずっとそうなるのだと思っていたに違いない。
 アンジェリアが誰のものにならないのなら、自分が一番、彼女の近くにいられる。

 それはいつも、ラドウィルトを葛藤させた。
 彼女に素晴らしい夫をと願うとともに、それが実現してしまえば自分がアンジェリアの一番ではいられなくなる。
 彼女の亡き父に誓った。彼女をすばらしい女王にしてみせる、そのために身を捧げると。
 その誓いに嘘はない。

「急ぎの政務を思い出した。少し席をはずす。すぐ戻る」
 護衛に言い置いて離れ、白薔薇の香りに囲まれてため息をつく。急ぎの政務などない。クライドに抱きしめられたアンジェリアを見ていたくなかったのだ。

 彼女がクライドを選ぶならば、喜んで見せなくてはならない。その演技は叛乱を抑えるよりもなお難しく思われた。
 ふいに騒ぐ声が聞こえて四阿へと走る。
 そこでは護衛がメイドを取り押さえ、ひとりが池に飛び込んだ。
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