女王陛下は溺愛禁止!
「クライド殿、私は……」
 迷うように口を開いたアンジェリアは、しかし揉めるような声を耳にして言葉を切った。

 目を向けるとラドウィルトはおらず、侍女と護衛がメイドの前にたちはだかっている。
 メイドは十五、六といったところだろう。黒い髪に黒い瞳をしていて純朴そうだ。パウンドケーキの載った盆を手に通すようにと主張しているが、護衛は一歩も通すまいと足止めしていた。
 アンジェリアがクライドの胸を押すと、察した彼はすんなりと離れてくれた。

「なにごとだ」
 四阿を一歩出たアンジェリアが声をかけると、侍女が一礼ののちに言う。
「このメイドが予定もなく参りましたゆえ」
 アンジェリアはじろりとメイドを見た。衣装からして上級メイドのようだ。

「エア様に追加のケーキをお持ちするように命じられました。自分もお茶会に合流するから先に持って行くようにと」
「許可なく陛下に話しかけてはなりません!」
 侍女が咎める。
 上級メイドであるならば王に自分から話しかけるなどありえない。が、彼女も焦っていたのだろうとアンジェリアは理解を示した。

「良い。あやつ、昼寝をすると申しておったが、こちらに来る気になったのか」
 アンジェリアは苦笑した。
 エアの名前を聞いただけで張っていた気が抜けていく気がする。エアは空気を壊す天才なのではなかろうか。この場に立たずして雰囲気を変えてしまう。

「どうせならあやつも同席させるか。ラドウィルトはどこへ行った?」
「政務があるとおっしゃられて、少し席を外されておられます」
「そうか。お茶の追加も頼む。ラドウィルトも呼んでくれ」
 侍女は軽く頭を下げる。
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