女王陛下は溺愛禁止!
 なにが起きた。
 ラドウィルトが駆け付けると、アンジェリアは青ざめて彼の腕をつかむ。

「殿下が私をかばってケガを負われた」
「かしこまりました」
 ラドウィルトは答える。犯人はとりおさえられたメイドだろう。
 おつきの侍女は悲鳴もなく薔薇の中にうずくまり、がたがたと震えている。

「そなた、陛下の侍女であるならばしっかりしろ。兵を呼べ」
 彼女はがくがくと頷くと、ゆるゆると立ち上がり、まろぶように走り出す。

「犯人は牢へ」
 言いながらラドウィルトはクラヴァットをはずし、引き上げられたクライドの腹の傷を押さえる。

「ラドウィルト殿……陛下は」
「殿下のおかげでご無事です」
「良かった」
 クライドの顔が歪んだ。笑みを浮かべようとしたらしい。
 この状況において、その虚勢、胆力に驚嘆した。

「クライド殿!」
 アンジェリアが隣に膝をつく。
「陛下……このような、無様……申し、わけな……」
「いい、しゃべるな!」

 クライドの手がなにかを探すように動き、アンジェリアはその手をとる。
「しっかりしろ!」
 クライドは安心させるように笑みを浮かべ、それからがくりと首が垂れた。

「血が流れすぎたやもしれません」
 ラドウィルトは懸命に傷を押さえ、蒼白のアンジェリアに言う。
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