こじらせ美女は王子様の夢を見る
あの頃




「はーおもしろかった!最高だったね玲央!」



「………おえ、」





映画が終わると、玲央は見たこともないような顔の色をしていた。





「…あ、あんなん見るもんじゃねーよ…やべーまじトラウマかも。今日飯食えねーわ。」



「なんだ。ホラー苦手なら言ってよね」



「いや、あんなグロいとは…おぇ」





こんな弱ってる玲央、新鮮





「いやーでも映画中の玲央、可愛かったなー」





相当怖かったのか、私の袖をちょこんと掴んで涙目で見ていた。




普段とのギャップにちょっときゅん、としたのは絶対教えてやんない。





「チッ、お前それ誰にも言うんじゃねーぞ」



「わかったわかった〜」





こそっと颯太くんに言っちゃお。




こんな玲央見たことないだろうし〜。





「言ったらミナが映画前、首で感じてたのもバラすから」



「か!?…感じてないし!!」





可愛いなんてとんでもない…




ほんっと悪魔!






「嫌ならバラすんじゃねーぞ。」






しょぼん、とする私の頭をぽんと叩く。





「俺らだけの秘密、な?」





首を傾げてそう言う玲央。




その言葉に少し胸がドキ、となった。




ほんと、この男はどれだけ人を振り回せば…





「え、玲央じゃない?」





その時前から女の子2人が駆け寄ってきた。





「えー久しぶり!」





すごく…見覚えがある…




待、って、、




あの子達、あの時デブといじめられてた私を玲央と一緒に見てた女の子達だ…




昔の記憶が蘇って




足が鉛のように重くなった。




…一歩も動けない。





「おー久しぶり」



「やっば、玲央かっこよくなりすぎ…///ライン教えてよ!また一緒に遊ばない?」





女の子達は玲央に見惚れて私の方には気づいてないみたいだった。




あの時と同じ




可愛くて、細くて、おしゃれな女の子達。




玲央の隣に立ってても、




恥ずかしくない容姿を持った女の子達。




死ぬほど憧れた。




私は咄嗟に俯く。




やばい、バレたらどうしよう。




またなんか言われるんじゃ…





「…え…」





その時、ぐっと手を捕まれた。






「……玲央?…」




「ごめん、今可愛い彼女いるから」






一瞬の出来事に、驚きすぎて声が出なくなった。




女の子達の目線は私にうつる。




……怖い。






「なーんだ、そうだよね。すみません、気づいてなくて。」






…気づかれて、ない?






「てか彼女さん美人すぎ!」


「それな、これは私たち無理だわ。じゃあね玲央!
お幸せに〜」






そう言って彼女たちは去っていった。





よ、かった。





緊張から解放されて、力が抜けたのかふらつく。





「お、っと、大丈夫かよ」そんな私を玲央が支える。





「あ、うん、ちょっと、安心して」



「ちょっとどっかで休むか」





外の空気が吸いたい、と言った私に合わせて私達はショッピングモールの外のベンチに座った。





「ほら、水買ってきた」



「…ありがと」





私の手が震えてるのに気づいた玲央は、





また私の手を握った。





「落ち着いたか?」



「うん、ちょっとね」



「あいつら、全然気づいてなかったな。ミナのこと」



「…うん」





まさか気づかれないとは思わなかった。




でも私、ほんとに




あの子達に…






「ごめん」




「え?なにが?」






神妙な面持ちで私に謝罪する玲央。





玲央が謝る理由なんて…



 


「勝手に彼女とか言った」






え、そこ??




そんなの…





「別に気にしてないよ」




「え?それで怒ってたんじゃねーの?ここ来るまでずっと黙ってたし」





怒ってるって思われてたんだ…





「…違うよ。昔のこと思い出して、彼女って言われたのはむしろ嬉しかったってゆうか、」



「そっ、か。よかった。」





ふぅ、と胸を撫で下ろす玲央。





私は玲央と繋いだ手に力を入れる。





「私さ、前いじめられてたじゃん?太ってたから。」



「…うん」





やばい、涙出てくる。





「…その時にさ、羨ましかったの、あの2人が。可愛くて細くておしゃれで、いいなあって……」





涙が出て、時々黙ってしまう私に





何も言わず「うん」と聞いてくれる玲央





「私さ、ほんとは嫌だったんだ…いじめられるの…デブミナって言われるの…私も玲央好きだったんだもん…


…でもさ、言えなかった、自信がなくて。…私もあんなに可愛かったら玲央の隣に並べるのにって何回も思った…


…だから今、玲央が私を選んでくれて…彼女って言ってくれて…すごく、嬉しかった…



…すごく怖かったけど…玲央が……ッうう、」





その時玲央は私を抱きしめた。




力いっぱいに。




大丈夫って言うように。





「ごめん、俺もあの時ミナの気持ち考えれてなかった。勝手にミナは強いって思ってた。傍観はいじめたも当然だ。いなくなって初めて気づいた、謝りたかったって。ほんとごめん。」



「…ゔゔ…ッ」






ふざけてよ。





こんな時に真面目に寄り添わないでよ。





…ずるい。





一気に、昔玲央が好きだった時の気持ちを思い出した。





抱きしめられて、触れ合ってるところがひどく熱い。









「ミナは可愛いよ」









…ずるい。




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