気まぐれヤンキーくんのあまのじゃくな溺愛。

１.気まぐれなヤンキーくん

都内で１番優秀な生徒たちが集まる。そして各地の不良が集まる。
私立慶王(けいおう)高校は、今日も安定の治安の悪さを維持している。


朝８時過ぎ。
靴箱でロッカーにある自分の上履きを取り出して履き替えると、
向かい側のロッカーからガシャン‼︎と強くぶつかった音が耳に入ってきた。

「…っ⁉︎」

心臓まで音に驚いてひっそり覗くと、皮肉に傷ついている同じクラスの竹内君の顔が目に映った。

「ほら”‼︎金出せよ、金。精々１万だろ?」
「ひっ!」

竹内君を雑に扱って脅しているのは今日顔を初めて知った２年生である知らない先輩。

「うわ、またやってんじゃん…」
「仕方ねぇよ…今のトップって【Viper】だろ?そこの幹部らしいじゃん、あの先輩」
「怖っ…ね、早く教室行こう!」
「そうしよう!」

彼らの様子に怯えてコソコソ話す生徒達は、次々と唯一の安全地帯である教室に駆け走って行く。

───これがうちの学校の日常。

喧嘩がない日なんて１日もなくて、むしろなかったら何か企んでいるんじゃないかってある意味もっと怖いんだ。
皆と同様、私だって、この光景を見る度に怖くて全身の震えが止まらない。
けど……ずっと、この光景を見るたびに胸が締め付けられるかのように苦しい。

「ちょ、何してるんですか!男子怖がってるでしょう⁉︎」
「は?だったらお前が出してくれんの?」
「…っ!」

後先考えずについ体が動いちゃうのは私の悪い癖。
巻き込まれに行くといつもこれだ。
問答無用で、こっちの話なんて関係ないという物腰で一切耳に入れてくれない。