気まぐれヤンキーくんのあまのじゃくな溺愛。
そして何よりも……

「何か言えよ‼︎」

どこのクラスか知らない怒りで満ちた先輩は私の襟元を力強く握ってくる。

「…っ」

例え女の私でも容赦なく荒い言動を見せてくる。
それがこの学校の風紀で当然だった。

一見、文武両道な秀才ばかりが集まる誇り高い名門高校に見える慶王高校だけど、
それは一部の集まりで、本当は─────喧嘩で1番を決める不良グループが集まった不良高校。
ピリピリとした張り詰めた空気が漂って、もう絶対絶命な時だった。

───彼が現れたのは。

「そこ邪魔」
「!」
「はぁ"⁉︎」
「喧嘩するなら他所でやって。迷惑」

淡々とその場に現れて毒を吐くような低く冷たい声で一言言ってスタスタと教室へ足を運んだ男子。
先輩は空気を変えた彼に怒りを放つも周りの「流石鳳くん!」とまだ昇降口にいた女子数名が彼の姿を見て、
乱暴に私や竹内くんを放ち「覚えとけよ‼︎」と定番の悪役セリフを残して走り去っていった。
それと同時に私はもうその場から去った彼を見て、思わず「あ…」と小さな声を溢した。

助けてくれた…?
……いや、自分の時間に他人の騒がしい雑音が耳に入って迷惑だったから、きっと文句言ったんだよね…。
今日も相変わらずマイペースだな、鳳君。

彼の名前は、鳳亮(おおどりまこと)君。
いつも遅刻するか欠席するか早退するか、その日の気分で学校に来てる超マイペース人。
今日は早起き出来たのか予鈴前に来れたみたい。
ちなみに、鳳君が遅刻・欠席・早退する理由の殆どが「寝不足」らしい。
どうして寝不足なのか詳しくは知らないけど、クラスの女子からの情報では『夜行性だから夜に眠れない』とか。
夜行性って…鳳君、もしかして吸血鬼?
……それは流石にこんな現実世界であるわけないか。
でも鳳君ってマイペースなだけあって、いつも何考えているかわからないんだよね。
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