【短編】大好きな旦那様の【運命のツガイ】が、私ではなかったとしたら?

7.

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 パーティーから半年。
 私が危機を感じていた一カ月は拍子抜けするぐらい何もなかった。歪狂愛(アムール・トーデュ)という香水もいつの間にか取り締まりが終わっていたらしく、第一級危険物として生成しようとした者は問答無用で極刑になるという。相当危険な物だったらしく、そんな理性が吹き飛ぶような香水を浴びて、ギリギリ理性を保っていた旦那様はやっぱりスゴイのだと思う。

 あの日以来、旦那様は小鳥を私の傍において、できるだけ一緒の時間を作ってくれる。心なしかその小鳥は目付きの悪い灰褐色の雀なのだけれど、とっても可愛らしい。
 時々、旦那様に反抗的なのは、使い魔的なじゃれ合いなのかしら?

「ねえ、旦那様」
「なんだい、ナタリア」

 少しずつ大きくなるお腹を眺めながら、今更ながらに怖いことを思い至った。

「【運命のツガイ】って、生まれる前から性別ってわかるものなの? 私は娘でも息子でも旦那様と同じくらい愛しているけれど」
「あの殿下のことだから、たぶん直感的な? もっと狂気じみた執念的な何かで察知しているのでは無いかな」
「狂気? 溺愛ではなくて?」
「んーー、殿下の場合は重愛な気がする」

 そう言いながら、私に甘々な旦那様だって十分溺愛であり、重愛だと思う。今日は旦那様の希望していた刺繍を仕上げる。

「旦那様、私は人族で魔法や術式には詳しくないのだけれど、この刺繍は持ち主を加護してくださるのですって。神官様から聞いて教えてもらったの」
「ナタリア。私のためにそこまで考えてくれていたなんて……!」

 ばさあ、と翼が広がって、私を包み込む。あの一件以来過保護感が増したけれど、それは私も同じ。旦那様に何かあったら、私の心は潰れて立ち直れないもの。私には【運命のツガイ】なんかなんて分からないけれど、私の愛する人は過去も、今も、未来も旦那様だけ。

「旦那様、愛していますわ」
「私も、君を愛しているよ。ナタリア」

 それとこれは母親の勘なのだけれど、たぶんお腹の子は双子なような──そんな気がする。それはそれで一波乱ありそうな気がするのだけれど、無事に生まれてきてくれるだけで私は幸せだと思う。
 旦那様もそう思わない?
「ちゅんん」と、灰褐色の雀が頷いた気がした。




 END
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