別れた警視正パパに見つかって情熱愛に捕まりました
 佳純だって忘れていない、あの嘘で心が壊れる寸前まで軋んだことも。

「いえ、彼は幼馴染で、同じ会社に勤めている人です」

 ここで琉生と結婚していると言えばよかったのかもしれないが、もう嘘はつきたくなかった。

「佳純、あの子の父親は――」

 口を開いた瞬を制するように佳純は言葉を挟んだ。

「前にも言いましたが大輝は私の子ども、ただそれだけです。お願いです。忘れてくれませんか」

 はっきり伝え、深々と頭を下げる。瞬は大輝が自分の子どもだと間違いなく気づいている。だからこうして話し合ってなにかしらの責任を取ろうとしているのだ。

 でも、佳純はこうなるのを一番恐れていた。勝手に大輝を産んで黙って育てたのは自分で、瞬には何の責任もない。
 じっと足元見続けていると、頭の上で声が響く。

「俺は、もう二度と諦めたくない」

「鮫島さん?」

 恐る恐る顔を上げると真剣な眼差しと至近距離でぶつかり、ふいに鼓動が跳ねた。

「あの子が俺の子でなくてもいい。俺は父親になりたいし、君とやりなおしたい」

 ゆるぎない意志が籠った声だ。

「で、でも、あなたは結婚してるんじゃ」
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