恋は揺らめぎの間に
「牧瀬君からは、告白があったの?」
「私と一緒にいてくれるって…。」
「それは付き合うのと同意義なの?」
同意義かと言われると、自信を持ってはいとは言えずに黙ってしまう。それで全てを察したのか、慶人君は大きな声を出して笑った。
「もしかしてだけど、好きって言ってないの?」
「言ってない…かな…。」
「言われても?」
「ない…かな。」
お腹を抱えて笑いをこらえようとする慶人君。
「だけど僕はフラれて、諦めなくちゃいけないんだね。」
少し棘を感じる言い方だったが、今まで二人の間をうじうじフラフラしていた私は、何の申し開きもできない。
「…わかったよ。」
ひとしきり笑ったあと、慶人君はにっこり笑った。
「二人が本当の彼氏彼女になったら、諦めるよ。」
「それはどういう…?」
「こういう。」
慶人君は私の手を取り、流れるようにその甲に口づけた。あまりにキザだが、あまりにナチュラルにするものだから、反応が遅れてしまう。
ひょえっという変な声とともに、顔が自分でも赤くなるのがわかった。
「ほらね。 まだ僕にも、チャンスあるよね。」
慶人君は茶目っ気たっぷりに笑った。しかし目だけは、真剣そのもの…
男の人の、力強いそれだった。