恋は揺らめぎの間に
「あなた! 慎司の妹さんじゃない!?」
「え? えーっと……」
誰……?
化粧っ気のない、スラッとした人。ラフな格好で、猫目のお姉さん。どこかで見たことがあるような気がするが、思い出せない。女性は掴んでいた手を離し、ほっと胸を撫で下ろす。
「良かったー。 慎司、いるはずなのに全然反応ないから、心配だったんだよね。 でも、家族が帰ってきたなら安心ね! はい、これお見舞い。」
「え?」
渡されたスーパーの袋の中には、スポーツドリンクや簡単に食べられる食べ物などが大量に入っている。
「あ、あの……」
「あっ、お代は気にしないでね! 慎司にはいつもお世話になって…いや、してる方か?」
まあとにかく!と女性は名刺を渡してさっさとエレベーターに乗り込んでしまう。
「何かあったらそこに連絡して! すぐ来るから! 明日の勤務は休みにしといたから、そう伝えておいてくれたら助かるっ。」
じゃ!と手を挙げると同時にエレベーターの扉が閉まる。まるで嵐のようにやってきて、去っていった女性を呆然と見送る。
「………あ!」
思い出した。今のは、遊園地の帰りに家の前で会った、慎司君と一緒に帰ってきた酔っ払っていた女性だ。