恋は揺らめぎの間に
「嶋 加奈子さん…。」
もらった名刺を見ながら、家に入る。表には慎司君と同じ署の名前が書いてあり、裏にはプライベートのものと思われる番号が走り書きされていた。
仲、良いのかな……?
慎司君に女性の友達がいるなんて、聞いたことがない。だからだろうか。同僚だろうとは思うが、少し、気になってしまう。
「ただいま〜。 慎司君? 帰ってきてるの?」
鍵はかかっていた。玄関には脱ぎ捨てられたままの、慎司君の靴がある。いつもは綺麗に揃えられているのに珍しい。玄関には上着や鞄も乱雑に置かれていて、お風呂場からは水の音がした。
シャワーかな?
今のうちに、もらったものを整理しようとテーブルに並べる。
「風邪薬?」
朝出勤したはずの慎司君が、昼前には帰ってきているなんて初めてだ。
もしかして、具合が悪くて早退してきたの?
バン!と大きな音がして、驚いてお風呂場へ向かうと、片手を壁について、体勢を崩している慎司君がいた。