恋は揺らめぎの間に



部屋着は着ていたけれど、まだ濡れていた慎司君を拭き上げて。頑なに拒否する慎司君を、無理矢理寝室に引き入れて、寝かせて。体温を測ったらやっぱり熱があった。それも、かなり高めの。

今朝見送った時には何ともなさそうだったのに…。

病院へ行こうというのに、寝ていれば治ると言い張る強情な慎司君には、病院に行く代わりに氷枕と熱さまシートとだけはすると約束させた。私に看病されるのを最初は嫌がっていたが、観念したのだろう。おとなしくお世話させてくれた。




「慎司君、おうどん作ったけど、食べれる?」



慎司君はふらふらしながら寝室を出てきた。小さな声でいただきますと言うと、いつもよりはゆっくりだが、食べ始めた。

食欲はあるみたいで良かった…。



「お薬も飲んでね。 私の持ってるものでもいいけど、さっき嶋さんって人が持ってきたものもあるよ。」



慎司君の動きがぴたりと止まる。



「…嶋さん、来たの?」

「うん。 スポーツドリンクとか持ってきてくれたよ。」

「何か言われなかった?」

「明日はお休みにしとくって言ってたよ。 あと、私のこと、妹だと思ってるみたいで、連絡先を教えてくれたの。」



ほらと名刺を見せながら、嵐のように来て、去っていったあの姿を思い出して笑ってしまう。



「明るくて、元気のいい人だったね。 同期なの?」

「先輩。」

「そうなんだ〜。」



仲いいの?と、口から出そうになった言葉を飲み込む。
何でだろう。なんとなく、聞けなかった。



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