あの子の成績表
いわゆるお姫様抱っこというやつです。
私は女の人の腕の中で佳苗ちゃんと目を見交わせました。
佳苗ちゃんはすべて演技だとわかった上で、付き合ってくれたのです。

今ならドアの鍵も開いています。
だから佳苗ちゃんも一緒に外へ……そう合図したつもりでしたが、佳苗ちゃんは少しだけ笑ってみせただけでひとり部屋の中に残ってしまいました。

私を連れて外へ出た女の人は丁寧に鍵をかけ直し、そしてまた歩き出しました。
きっと行き先は医務室です。
そこに穂波がいる。
そう思うと緊張して心臓がドキドキしてきてしまいました。

「先生、急患です」
階段を登ったり下ったり、鍵付きのドアを開けたり閉めたりしてたどり着いた先は、清潔な部屋でした。

白い天井に白い壁に白い床。
そこに置かれているものたちはみんな実際の診察室にあるようなものばかりで驚きました。

「どうした?」
椅子に座ったまま振り向いた男性は50台後半くらいで、色の白いヤセ型の人でした。
< 114 / 136 >

この作品をシェア

pagetop