あの子の成績表
穂波がか細い声で言うと、中で息を飲む音が聞こえてきました。
そして「なんやぁ……そんなことができるんかいなぁ……」と鳴き声が聞こえてきて、それは下へ下へと移動して行きました。

ドアの前で泣き崩れてしまったみたいです。
そんな佳苗ちゃんにまた泣きそうになったけれど、私達にはやっぱり時間がありません。

「佳苗ちゃん今までありがとう。私達ここから出る」
「うん。うん。誰かが来ても絶対にあんたらのことは言わへん。だからはよ、行き!」

私は佳苗ちゃんの言葉に背中を押されて歩き出しました。
穂波のために時々休憩を挟みながら、土の通路を歩き進めます。
砂埃が体に良くないのか、穂波は何度も咳き込んでいましたけれど、それでも「大丈夫」と気丈に振る舞っていました。

そしてついに、たどり着いたんです。
星空が見える縦穴まで。
私は普段仕事で使っているロープを肩にかけました。

まずはここをひとりで登って、それから穂波を引き上げる作戦です。
「瑞希、大丈夫?」
「うん。大丈夫だよ」
ここの土は柔らかくて登っていくのには適していません。

けど、やるしかないんです。
私は手を伸ばして穴に飛びつきました。
指先が土に食い込んでその先にある大きな岩を運良く掴むことができました。
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