あの子の成績表
新聞
無事家に戻ってきたことを両親はとても喜んでくれました。
穂波は地元の病院に入院して、どんどん回復していってるそうです。
でも、わからないことがひとつだけありました。

「今日もニュースになってなかったね」
あの公園で正樹と一緒にベンチに座り、私は呆然と呟きました。
あれだけの爆発があったし、私と穂波の証言もあったのに、子供たちが集められている炭鉱についてなにもニュースにならないのです。

あそこで苦しんで死にかけている子たちのことを誰も記事にしないのです。
「もしかしたら、もっと大きな力が動いてるのかもな」
「大きな力?」

正樹は頷き、それ以上はなにも言いませんでした。
脱出してきた私達の力に及ばない存在がついているかもしれない。
それでも私はこれを誰かに伝えていかなきゃいけないと思いました。

だからあれから10年も経過した今、あなたを呼んだんです。
「う~ん……子供だけの労働か」
久保田瑞希から聞き出した話はとても荒唐無稽で記事にする気にはなれないものだった。
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