あの子の成績表
いくらフリーライターの俺でもまるっきしの嘘は書けない。
「この話はなしかな」
俺は久保田瑞希の発言を録音したデータを引き出しの中にしまい込む。

そのとき、アパートの玄関ドアが開く音がしてあいつが買い物から帰ってきた。
3年前に出会って付き合い初めて、あれよあれよと一緒に暮らすようになった子だ。
可愛い見た目に反してちょっと気性の荒いところのある、猫みたいな子。
「なぁ、子供ばかりの鉱山があるって話、信じるか?」

「はぁ? なによそれ?」
彼女は関西訛りの声で返事をする。
それもまたいい。
「この前記事の取材に行っただろ? そのとき仕入れたネタだよ。子供ばかりが働いている鉱山があるって」

そう説明すると、彼女が珍しく興味を持ったようで、買い物袋を手に下げたま近づいてきた。
「それって誰?」
「誰って?」
「取材した人やよ」

「あぁ。久保田瑞希って子。お前の一個下」
「瑞希……」
「どうした? 佳苗」
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