あの子の成績表
それも、とびっきり意地悪な笑顔です。
「なにもしてないって、どういうことですか?」
先生が私の机の前で仁王立ちになって言いました。

「そのままの意味です。夏休みの宿題はしませんでした。だから持ってこれません」
優等生で通っていた私がこんなことを言うなんて思ってもいなかったのでしょう。
先生は目を吊り上げて鼻から熱い息を吐き出しました。

「なにを考えているんですか!? あなたは夏休み中になにをしてたんですか!?」
先生のかな切り声は廊下まで響きます。
もしかしたら隣のクラスまで聞こえていたかもしれません。

「海に行ったり、山や川に行って遊んでいました。あと、テレビゲームも沢山しました」
本当はいなくなった子たちについて調べていた時間が一番多いのだけれど、もちろん言いません。
「先生、もしかして羨ましいんですかぁ?」

嫌味な声を出してそう質問すると先生が両手で私の机を叩きました。
その衝撃は床を伝って私の椅子を震わせました。

恐怖心が湧き上がってきても私は笑みを絶やさず、ニヤニヤと先生を見つめ続けました。
本当に嫌なヤツって感じですよね?
演技をしながら、私もそう思っていました。
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