あの子の成績表
☆☆☆

問題の2学期の開始です。
私は『人間的評価』とわざと低くするため、あえて宿題をすべて家に忘れて登校しました。

教室内で先生が宿題を集め始めたときには心臓がドキドキして、背中と手のひらに汗が滲んで出てきました。
「久保田さん、宿題はどうしたの?」

少しも提出する素振りを見せない私に、先生が不思議そうな顔で質問して来ました。
きた!
私はごくちと唾を飲み込んで「忘れました」と、みんなに聞こえる声で言いました。
「忘れたって、全部?」

「はい。夏休みの友も、自由研究も、習字の作品も、全部やってません」
その発言に教室中がざわめきました。
なにせ私は6年生になってから宿題を忘れたことは1度もありませんから、先生も驚いて固まってしまっています。

「それなら明日持ってきなさい」
「いいえ先生。私は宿題をやっていませんと言ったんです」
やっていないものは持ってこられません。

家に戻れば最後まで解き終えた夏休みの友や、できあがった工作がある。
だけどそれを提出する気はありませんでした。
お母さんやお父さんにバレないよう、段ボール箱につめてクローゼットの一番奥にしまってあります。

先生はだんだんと私が言ったことを理解したようで、顔を真っ赤にして近づいてきました。
絶対に怒られると思って本当はとても怖かったんですが、私はわざと笑いかけて見ました。
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