あの子の成績表
困らせてきた先生やお父さんお母さんの顔が離れません。
「そうやって泣けるってことは、瑞希はまだいいやつってことだな」
正樹がベンチに戻ってきてそう言いました。

今回の爆弾はどうやら不発に終わったみたいです。
正樹にありがとうと言いたかったけれど、言えませんでした。
涙が次々に出てきて、しゃくりあげることしかできなかったからです。

☆☆☆

どれだけ胸が痛くても続けなければいけません。
中途半端でやめてしまえば穂波に会えないどころか、私は友達も信用もすべてを失ったままになってしまいます。

ただひとりだけ、正樹という理解者がいてくれたおかげで頑張れました。
「キッズスマホを絶対に手放すなよ?」

ある日、珍しく教室で話しかけてきた正樹が、不意にそんなことを言いました。
「え?」
「なんだか、胸騒ぎがするから」

そう言われて私は素直に頷きました。
キッズスマホはもちろん肌見放さず持っています。

最近は友達と連絡を取り合うことがなくなってきたので、あまり活躍の場はありませんが、正樹がそう言うのであればちゃんと持ち歩こうと思いました。
そして正樹の胸騒ぎはそれから一週間ほどしたとき、的中しました。
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