あの子の成績表
どうりであたりが暗いはずです。
よく見てみると、部屋の中に窓はひとつもありません。
天井の上の方に換気扇がつけられていて、それがカラカラと回転しているだけです。

「どうして地下施設なんかに……」
そこまで言って私はようやく真っ昼間に誘拐されたことを思い出したのです。
黒いワゴン車に押し込められて注射を打たれたときの恐怖が蘇ってきて全身が震えました。

「怖がらなくてもええよ。ここでは仕事勉強をしておれば大丈夫やからね」
「仕事?」
私にできる仕事なんかがあるんでしょうか?

知識も経験もなにも持っていないので更に不安が襲いかかってきました。
「そう言えば自己紹介がまだやったね。私は佳苗。あなたは?」
「私は瑞希。小学校6年生だよ」

「そっか。じゃあ私よりひとつ下なんやね」
「中学生なの?」
「うん。でも去年からここにおるから、まだ小学生の気分」

佳苗ちゃんはそう言って笑って見せました。
「佳苗……ちゃんは、もう1年間もここにいるの?」
「うん。でももっと長い子もおるよ。『人間的評価』欄が適応されてから10年やろう? 長い人は10年間ここにおる」
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