無気力な王子様は、今日も私を溺愛したがる
「それじゃあ、二人は置いて行こうか、玲奈」
「へっ、ど、どこに……っ⁉」
だけど、一樹くんは私の質問に答えることなく、私の手を握ったまま、ずんずんとどこかへと進んでいく。
「ちょっと染野くん?
抜け駆けは良くないよ」
「うわぁ……、染野先輩ひどいです」
後ろから、琥珀くんと颯太先輩の一樹くんに対する文句が聞こえてきたけれど、一樹くんは振りかえらなかった。
それどころか、少しだけスピードを上げて進んでいく。
背の高い一樹くんのそのスピードにはついていけず、私は小走りになってしまう。
「い、一樹くん……?」
「ん?」
「どこに向かってるの……?」
「内緒」
な、内緒……っ⁉
それじゃあ分からないじゃん……!
なんておろおろしていると、急に一樹くんが止まった。
「いたっ」
その背中に鼻をぶつけてしまって、可愛くない声を出してしまう。